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残る敵は後方で指揮を取っていた頭目と思われる男。


どうしたことか男は持っていた斧を地面に置き両手を上げた。


「あーあ、降参しますよっと。俺が悪かったんでここは見逃してくれねーか?」


そう言った男の言葉からは反省の欠けらすらみじんも感じられない。


ただなんとなく言ってみただけ、とも言う風にすら聞こえる。


勝手な言い分と態度に腹の立った私は男に近づき胸ぐらを掴む。


「ふざけるな!大の男が私利私欲の為に大勢で襲ってきて勝機が薄れたら見逃してくれ?都合が良いにも程がある!!」


「馬鹿な女だ。のこのこ近づいてきやがって。」


男は懐に手を伸ばし隠し持っていたナイフを抜き私に襲いかかってきた。


喉元に迫る殺意の込められた刃。


瞬時に首を仰け反り迫りくる死から逃げる。


「くっ!!」


刃は私の首横をかすめ流れ出す鮮やかな紅。


致命傷は避けれたものの、大きく仰け反った為後方に倒れ込んでしまった。


「ヒャーハッハ!」


態勢を崩した私に追い打ちをかける男の刃が再び迫りくる。


「私の真冬をこれ以上傷つけないで!!」


パーン!!


銃声が鳴り響くと同時に男の頭部から紅い花が咲き、私を更に紅へと染める。


汚れ過ぎちゃったかな・・・。


「大丈夫!?すぐ手当するからじっとしてて!」


慌ただしく駆け寄ってきた香はすぐさま私の首に薬を塗り始める。


治療を施す彼女の手は酷く震えていた。


やっぱりこの旅は私達を普通から遠ざけていく・・・。


しかたなかったとは言え人を殺めたという現実に気が遠のく。


心は冷え暗闇へと落ちていく。


これから先もどうなるかわからない。


これ以上汚れたくない。汚さしたくない。


辛い思いなんかしたくない。させたくない。


荒ぶる呼吸を抑える為口に手を当て顔を下に向ける。


香は震える手で私の頬をさすってきた。


「辛かったね。でも大丈夫。二人なら辛さ半減だ♪」


強く優しい言葉。


自分だって辛いはずなのにいつもそうやって・・・。


頬に当てられた手を掴み香の大きな瞳を見つめる。


美しく優しい瞳に吸い込まれた私は香の手を強く引きこちらに引き寄せ抱きしめる。


「ふふっ、よしよし。」


受け入れるかのように優しく抱き返され、香の温もりと甘い花の香りに包まれる。


あまりの愛おしさに理性は失われ彼女の顔にゆっくりと顔を近づけそのまま大きな瞳を閉ざす。


君を知ったその日からずっとこうしたかったんだ。


唇は重なり、時は流れを止める。


傷を癒すかのように幾度となく重なり合い互いを深く知る。


紅は白に塗り替えらていく。


やがて大きな瞳は再び開き静かに時を刻みだす。


その時の二人には言葉なんていらなかった。


雪が融けるかの様に繋がった思い。


今思えばこれは私の負った罪だったんだ。

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