始まり始まり
ねぇ知ってる?また、1人居なくなったんだって。
知ってる。この近くに住んでる女子高生でしょ?
きっと、黒い招待状が届いたんだよ!
いや…そんなオカルトある訳ないじゃん。
だって、居なくなった人の家には必ず黒い招待状があるらしいよ?
そこが、目の付け所なのよ。私の見たてでは、きっとこの近くに人攫いが住んでて、その招待状によってオカルトだと思わせてるのよ!
えー…そうかなぁ…
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「…という会話を耳に挟んだんだ。」
「な、なんでそれを私に言うのよぉ!」
「ふっふっふ。更にだ、この招待状はあの黒館から届いてるんじゃないかという噂なんだ!」
「あそこ、ただでさえ不気味なのに…いや、だからこそ、か。」
『黒館』
永らく誰も住んで居ない廃墟の館。年長者に聞いても、あそこに誰かが住んでいた記憶は無いと言う。
しかし、ある人の話によると、あの館は前は白かったと言うのだ。ふと気づくと黒くなっていた。と
色を塗り替えたのか?誰が、なんの為に?廃墟の館という不気味さから、幽霊の仕業や、あそこには『ナニカ』を作り出す研究室がある。なんて噂も流れたりしたが、最近はそれも下火になっていた。
そんな時、流れ始めたのが『黒い招待状』の噂だった。この招待状が届いた人は、否応なく黒館に連れ込まれてしまう。そんな噂だった。
この噂が流れ始めた時、この町で行方不明者が多発した。警察も捜査をしているが、未だ進展は無いという。
「とゆー訳でだ!招待状には気をつけろよ?」
「気をつけろよったって…届いたらどうしようも無いんでしょ!?」
「…あれ?信じてんのか?」
「別に信じてる訳じゃないけど!」
「ほーう。あ!後ろに招待状が!」
「流石にそんなんじゃ騙されないわよ。」
キーンコーンカーンコーン
「おっと、最終下校時間を過ぎてしまう。」
「あんたがバカな話してるから…!ほら、急ぐよ!生活指導の先生、招待状より怖いんだから!」
「おうよ。」
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「なぁ、黒館…」
「嫌よ」
「…まだ何も言ってないじゃないか!」
「どうせあんたの事だから、黒館寄ろうとか言うんでしょ?嫌よ。」
「…ちぇ。」
「どうしてあんたはそう子供なの…」
「うるさいぞ。貧乳。」
「…歯を食いしばれ」
「ごめんなさい嘘です!」
「待ちなさぁい!」
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おいで…おいで…館が気になるのなら、中に入ってきなよ、一緒に遊ぼう。美味しいご飯も、遊び相手もたくさん居るよ。
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「ちょっと洋一!暇なら郵便受けのやつ取って来て!」
「…はいよ。人使いが荒いなぁ。」
ガチャ。
「なんだ。いつも通りだな。広告しか入ってない…あれ?底になんかあるな。黒くてよく見えん」
ガサゴソ
「…なんだこりゃ?」
郵便受けの底にあったのは、全面真っ黒な紙に金の文字で、
『招待状』
とだけ書かれた紙だった。
「まさか例の…そんな訳ないか。イタズラが流行ってるって噂だしなぁ。」
グラリ
「……?なんだ。一瞬体が傾いたような。」
ビュォォォ!
とても強い風が吹き
「あっ」
手から招待状が離れた。黒い招待状は風に乗り、まるで自分の意思で飛んでいるかのように空へ舞い上がり、直ぐに見えなくなってしまった。
「あーぁ…ま、いいか。どうせイタズラだろ」
ガチャ
「持って来たぞ〜」
その後、いつものように普通に過ごしてる内に、招待状の事は
『明日の話のネタになるな』
という程度にしか頭に残らなかった
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【夜】
「さて、もう寝るか。」
おいでよ、おいで
返事はちゃんと受け取った
いつも一緒のあの子と共に
僕の館に遊びにおいで
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「……なーんか嫌な夢見た気がするなぁ。」
まぁいいか。
「いってきまーす」
「洋一、なんか午後から工事があるから、黒館の前の道を通って下校して下さいって学校から。」
「へぇ?いつもはそんな事言ってこないのに…珍しいな。」
「そうね。じゃ、いってらっしゃい」
「おう」
しかし、あの辺って道路結構あったはずなんだが…全部工事してんのか?