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侯爵令嬢は手駒を演じる  作者: 橘 千秋
第一部 ローランズ王国編
6/150

06話 問題児たちの企み

いつもより長め。

続サイラス視点です。

 ――ローランズ王家王城


 2日前にローランズ王国建国300年記念式典も終わり、最近の鬼のような忙しさから解放された王城で働く者たちは、通常業務に勤しんでいた。

 そんな日常の中、一人の男が青筋を浮かべ、足早に己の主の元へ向かっていた。


 彼の名はサイラス・イングロット。

 建国以来の忠臣『王家の三柱』のひとつ、イングロット公爵家の嫡男だ。

 現在は第二王子エドワード付きの補佐官をしているが、次期宰相候補筆頭とも言われている。

 第一王女シェリーと3か月前に結婚したが、仕事に忙殺されてあまり家に帰れていない、ちょっと可哀相な男だ。


 廊下ですれ違う者たちは皆、ぎょっとした顔でサイラスを見て振り返る。

 それもそのはずである。

 第二王子に仇名すものには容赦をしない『冷血補佐官』が、あきらかに怒りを湛えているのだから。

 廊下にいた人々は、さりげなくサイラスに道をあける。

 そんなことには歯牙にもかけず、サイラスはズカズカと進む。

 しばらくして漸く目的の部屋に到着する。


 第二王子エドワード殿下の執務室――――

 手短にノックをして入室すると、エドワードが書類を片づけている所だった。

 その姿を見るとサイラスは大きく息を吸った。


 「この馬鹿王子!何故、ルイス家のご令嬢に召喚状なんて送っているんですか!!」


 室内に『冷血補佐官』の絶叫が響いた。




########

(サイラス視点)


 「馬鹿とは何だ。おいサイラス、この部屋が完全防音でなければ不敬罪で牢屋行きだぞ」


 けらけらと笑うエドワード様を見て、私は胃がキリキリしました。

 なんて事だ、この馬鹿王――ではなく、エドワード様はすべて判った上で楽しんでいらっしゃる。

 この6つ下の幼馴染は『理想の王子様』なんて呼ばれていますが、実際は問題児です。

 ただの問題児ではない、此の方は自分の行動の果てに何が起こるのかをすべて理解した上で問題行動を起こす、厄介すぎる問題児なのです。

 要領だけはいいので問題行動は公にはならない……というか私を含めた身近な者たちが後始末をしています。

 また、腹の立つことですが稀に問題行動の果てに国の為になることがあるので、頭ごなしに否定できないのです。

 自分にとって面白い方法で問題を解決しようとする……もはや悪癖ですね。


 そんなエドワード様が我が国の三大貴族と言っても過言ではない、ルイス侯爵家のご令嬢に個人的な召喚状を送ったのです。


 召喚状とは王族が強制的に人(主に貴族)を呼び出せる書状のことで、此の書状を貰ったものは如何なる理由があろうとも、必ず定められた期限までに呼び出した王族の元へ赴かなければならないものです。

 どれほど遠くにいても、瀕死の重傷を負っていても、愛する家族が危篤だったとしても強制され、もし召喚に応じなければ反逆罪として一族ごと処刑されるため、拒否権はないのです。

 そのあまりの強制力から使えるのは王族のみ、しかも発行の際は国王の許可必要になります。


 本来召喚状は、有事の際の緊急招集や罪人の呼び出しなどに使われます。

 召喚状を受け取った者は、ある種の『覚悟』を持たなければならない。

 それをルイス侯爵家令嬢個人に送り付けたのです。


 もしも令嬢の醜聞になる事態になったりしたら……ルイス侯爵家がエドワード様の敵になるかもしれない。

 ただでさえ今は、次期王に第一王子ダグラス様を擁立しようと企てる貴族共がいるというのに……

 格好の餌になってしまいます。

 令嬢を呼び出した理由が何か重要な案件だったら良いのですが……。

 まあ、エドワード様の用は十中八九あの件です。

 私は一縷の望みを賭けて尋ねました。


 「エドワード様、何故ルイス家の令嬢に召喚状を送ったのですか?」


 「そんなことか。ルイス侯爵令嬢こそが『リーア』だからだ」


 「先日もそう言って令嬢を呼び出して、別人でしたよね?」


 「そうだったな、実にくだらない女だった」


 「おそらく、ルイス家のご令嬢は『リーア』ではありませんよ」


 「何故だ?」


 「エドワード様からお聞きする『リーア』の特徴と類似点がひとつもありませんから……貴方が一番判っていると思いますが」


 「類似点がないからこそだ。あの女は俺を唯一敗北させた女だぞ?」


 私は思わず頭を抱えました。

 エドワード様の執着は凄まじい。

 年々その度合いが上がっているのは、私の気のせいではないでしょう。


 執務室にノックが響きました。

 「キール・メイブリック近衛第三師団団長さまがお見えです」という侍女の言葉の後にキールが「よっ!」と軽い調子で入室して来ました。

 お気楽で羨ましい限りです。


 私は補佐官モードに切り替えました。

 隣に目を移すとエドワード様も『理想の王子様』になっていました。


 「キール団長、一体何用ですか?」


 「そう怖い顔しないでよ、サイラス。キールは私が呼んだんだ」


 相変わらずエドワード様の変わり身は気持ち悪――こほん、素晴らしいです。

 エドワード様がキールを呼んだということは、何か重要な案件なのでしょう。

 此処は『冷血補佐官』と言われる私の出番ですね、致し方ない。


 「貴女は下がりなさい」

 

 そう私は簡潔に侍女に言いました。


 「ですが……皆様にお茶をお出ししませんと……」


 「下がりなさいと言っているのです。給仕の必要はありません」


 食い下がってきた侍女に私は再度命令をしました。

 渋々と言った様子で退室する侍女。

 室内にはエドワード様と私、それにキールの三人だけになりました。


 「全く、第二王子付きの補佐官であり次期公爵のサイラスの命令に従わないとは……本当に王宮の侍女か?判りやすすぎる間者だな。俺も随分と嘗められている」


 素に戻ったエドワード様は呆れ果てた目で侍女が退出した扉を見ている。


 「え!?今の侍女、間者なのか!?」


 このアホは放っておいて、エドワード様と話の続きをすることにします。


 「エドワード様、ルイス家の令嬢に召喚状を送って何かあったらどうするんです!前に呼び出した令嬢は召喚状ではなく招待状でしたよね!? 場合によってはオルコット公爵家も敵に回す可能性があります」


 ルイス家令嬢の母はオルコット公爵の末妹、『オルコットの秘宝』とまで言われた美姫、エリザベス様。令嬢ジュリアンナ様を出産後に元の身体の弱さから亡くなり、末妹を溺愛していたオルコット公爵は、エリザベス様に瓜二つのジュリアンナ嬢をとても可愛がっているらしい。


 ルイス家とオルコット家が敵になったら……考えるだけでも恐ろしい。

 そんな私の気持ちなど知らないとばかりにエドワード様は不敵に笑う。


 「そんなことは判っている。だからこその召喚状だ、招待状では家の力を言い訳に逃げられるかもしれない。それに、召喚状を出したということは王の承諾を得たということだぞ、サイラス」


 「ですが……」


 「エドの言う通りだぜ、サイラス。エドも何か考えがあるんだろうし」


 その言葉を聞いて、私はギロリとキールを睨みつけました。


 「キール、貴方知っていたのですか?ルイス家のご令嬢にエドワード様が召喚状を送ったということを」


 「え?だってルイス家に召喚状を届けたのはオレだし」


 「近衛第三師団団長直々にですか……」


 「でないと受け取らないかもしれないだろう?」


 「一令嬢に召喚状を送ったというだけでも前代未聞なのに……何てことしてくれてんですか!貴方達は!」


 「そう怒るな、サイラス。また胃に穴が開くぞ?」


 「誰のせいだと思っているのですか!ああ、此れでルイス家の令嬢が『リーア』でなかった場合どうするんです?他の女と間違われて呼び出されたと知ったら、彼女傷つきますよ?そうなったら……彼女の周りの人たちが黙ってはいないですよ!」


 「ジュリアンナが『リーア』ではないなら……ルイス家とオルコット家が俺個人の敵になるだけだ」

 「だけって……良いですかエドワード様、ご令嬢を傷つけたら貴方が引き込もうとしている()も確実に敵になりますよ?むしろ此方に積極的に報復をしに来るでしょう」


 「なー、そもそもルイス家のお嬢ちゃんは『リーア』なのか?召喚状届けてなんだけど、オレにはそう思えないんだけど」


 キールの言葉に私も頷く。

 そもそも私たちが聞く『リーア』とジュリアンナ嬢は違い過ぎるのです。


 「容姿はブロンズヘアにチョコレート色の瞳、年齢は18になっているはずだ」


 「ですが、ジュリアンナ嬢はハニーブロンドに深紫の瞳、年齢は17です。髪色と年齢は兎も角として、瞳の色は変えようがないのでは?」


 「それに『リーア』はエドを出し抜くような性格なんだろ?ルイス家のお嬢ちゃんと言ったら、みんな憧れの社交界の花だし。大事に育てられた貴族令嬢がそうなるかー?一昨日の夜会でルイス家のお嬢ちゃん誘ったオレの同期なんか……ちょっぴり恥ずかしがり屋でめちゃくちゃ可愛かったって興奮していたぞ」


 私は件のジュリアンナ嬢を思い出す。


 「容姿に家柄、教養、ダンス、所作……全てが優秀で『完璧な淑女』と呼ばれていますし。性格も実際に話したことがありますが、楚々とした様子の控えめで穏やかな方でした。欠点と言えば……少々弟思いなことぐらいでは?」


 「それは欠点ではないだろう……ブラコンを表に出しているのは完璧すぎないようにワザとだと思うが?お前たちが俺の予想が信じられないのも判るが、もう召喚状を送ったんだ、今更なしにはできない。それにもしジュリアンナが『リーア』だった場合、素晴らしい人材が手に入るんだ。リスクに対して見返りは十分だろ」


 「人材ですか……」


 「ああ、ジュリアンナが『リーア』だった場合には王都教会に潜入してもらう」


 「――潜入ですか!?確かに今の身動きが取り辛い現状では、第三者の協力は歓迎したいですが……。侯爵令嬢にできるとは到底思えません」


 「エドがいつも目をギラギラさせて話す『リーア』なら出来るんじゃねーの?」


 「よく判っているじゃないか、キール。その通り最高の手駒だ」


 「「手駒……」」


 キールと私の呆れた呟きが室内に響きました。

 エドワード様が『リーア』を手に入れたのなら、絶対に離しはしないでしょう。

 まだ見ぬ『リーア』に合掌です。


 執務を一段落させたエドワード様は、護衛を連れて記録局へに向かいました。

 「最終兵器を取りに行く」と笑顔で言っていましたが……碌なことではないのでしょう、確実に。


 さて、私も仕事に戻りましょう。

 明日はルイス家のご令嬢とエドワード様の間を穏便に取り持たねばなりません。

 今から胃が痛いのなんの……。


 「やはり、ルイス家のご令嬢が『リーア』だとは思えません……」


 私の言葉は誰にも聞かれることなく消えました。

 誰かさんが面倒を起こしたので、今日も家には帰れません。

 はあ……新婚なんですけどね。




########




 「確かに、わたしがエドワード殿下が探していた『リーア』ですわ。お久しぶりですね、とご挨拶した方がよろしいかしら?」



 緊張しているルイス侯爵家の長女という演技を止めてお菓子を咀嚼し始めたジュリアンナ嬢を理解するのに数分掛かってしまいました。


 本当にジュリアンナ嬢が『リーア』だったとは……素のエドワード様との会話を聞いても現実とは信じがたい光景です。

 ちらりとキールを見ると口をポカンと開けて静止しています。

 早くその間抜け面は何とかした方がいいですよ、キール。



 「それで、エドワード様は侯爵令嬢ごときに何をお望みですか?」


 「俺の手駒になってよ、ジュリアンナ」


 「嫌です」


 「お前に拒否権はない。判っているだろう?」


 エドワード様に自然と嫌味と皮肉を混ぜて会話するなんて……今更ですがジュリアンナ嬢が『リーア』だというのは納得です。

 それにしてもエドワード様は、何ていい笑顔なんでしょう。鬼畜が滲み出ています。



 「それで、具体的には手駒としてわたしは何をしたらよいのでしょう?」

 

 「お前は菓子が好きなのか?」


 「好きです。それでわたしの質問に答えてはいただけないのですか」


 お菓子を咀嚼しながら、エドワード様を睨みつけるジュリアンナ嬢。

 『完璧な淑女』の演技をしていた時には見せない顔ですね……新たな扉を開けてしまう輩が出てきそうです。

 やれやれと肩を竦めたエドワード様……すごく嬉しそうです。

 新しい玩具を与えられた子どものようです。

 ジュリアンナ嬢の身が心配になってきました、それ以上エドワード様を喜ばせないで下さい!


 そして室内に沈黙が落ちました。

 不機嫌なジュリアンナ嬢、内心大喜びのエドワード様……此の沈黙に飛び込む勇気はありません。


 すると、先程まで間抜け面で静止していたキールが笑い出しました。


 「ぷはははははははは、あー可笑しい。お嬢もエドも面白いなー」


 「笑いごとではありません、キール」


 「だってサイラス、エドの本性を知って会話できる令嬢なんてスゲーよ!しかも、あの『完璧な淑女』がだぞ。これが笑わずにいられるか!」


 私は頭を抱えながら、内心でキールを褒め称えました。

 良くやりました!あの沈黙を壊して下さってありがとうございます。

 脳筋もたまには役に立つのですね。


  「申し訳ありません、ジュリアンナ嬢。キールと私は貴方がエドワード様の探し人だと思えず、不躾な態度を取りました。それと、私たちの協力者としての能力があるかを見極めさせてもらいました。改めて謝罪します」


 眉を顰め、此方を訝しむジュリアンナ嬢に私は慌てて謝罪をしました。

 謝罪の後にジュリアンナ嬢が一瞬、可哀相なものを見る目で私を見たのは気のせいだと思います、ええ気のせいです。


 「それで、わたしは皆様の御眼鏡にかないまして?」


 「期待以上だ。探し回った価値があったな」


 「オレもそう思う。お嬢以上に適任はいないな!」


 「私も異論はありません、さすがはルイス家のご令嬢ですね」


 ジュリアンナ嬢の質問に対してエドワード様・キール・私の順に返答しました。

 できればジュリアンナ嬢にはエドワード様の手綱を握って欲しいものです。

 しかしエドワード様の執着が……私の出来うる限りジュリアンナ嬢をサポートしましょう。


 そして私は大切な協力者となったジュリアンナ嬢に王都教会潜入の任務について説明を始めました。








 「殿下に対する数々の非礼、申し訳ありませんでした。わたしの処分の方は如何様にでもなさってください」



 説明の後、エドワード様に謝罪をしたジュリアンナ嬢。

 彼女も少々頭に血が上っていたと思われます。

 いきなり手駒になれとか言われたら……それは、しょうがないですね。

 


 「演技をやめろと言ったのは俺の方だ。完璧な淑女のお前も素のお前も中々楽しかった、だから処分はしない。これからも公の場でなければ、俺の前では素でいろ」


 「温情感謝いたします。では、あまり長く此処に居ては間者に怪しまれますので、御暇させていただきます」


 「ああ、潜入の件よろしく頼む」


 「お嬢、頑張ってくれよな!」


 「ジュリアンナ嬢……本当にすみません。頑張ってください、私も出来る限りのことはしますので……」


 「は、はい」


 完全にエドワード様に気に入られたジュリアンナ嬢に対し、私は同情を隠せませんでした。

 そんな私を見たジュリアンナ嬢は、一瞬不思議そうな顔をすると扉へと歩き出しました。


 

 ふと、扉を開ける直前。

 ジュリアンナ嬢がくるりと此方を振り返りました。

 顔は微笑を浮かべていました。

 その表情を見るや、私の背筋にぞわりと悪寒が走りました。

 まるで身に覚えがあるような……?


  「エドワード様、わたしはこれまで色々な役を演じてきましたわ。でもその中で『悲劇のヒロイン』というものは演じたことはありませんの」


 ジュリアンナ嬢が言うとエドワード様とキールは首を傾げました。

 私は長年の勘と言いますか……兎に角ジュリアンナ嬢が何か良くないことをしようとしているのが判りました。

 慌てて止めようとジュリアンナ嬢に声を掛けようとしましたが、時すでに遅し。


 バンッと勢いよく扉を開け、ジュリアンナ嬢が飛び出していきました。


 少し開いている扉からは廊下に居た侍女の「どうしました!?」という声とすすり泣くジュリアンナ嬢の声が聞こえてきました。


 「え、エドワード殿下が……わたしを別な女と勘違いして……それで比べられて……わ、わたし、お慕いしていたのに……どうしたら……」


 続いて聞こえた言葉に慌てた私は、急いで扉を閉めました。

 なんてことでしょう……すぐに『第二王子がルイス侯爵令嬢を弄んだ』と噂が流れます。


 「すっげーな、お嬢の演技力は!」


 「ふふはははっは、さすがは俺を敗北させた女だな!」


 なんで楽しそうなんですか、この馬鹿二人は!!


 「そう怒るな、サイラス。やり方はアレだが、此れで誰もルイス侯爵家令嬢が第二王子の手駒だなんて思わないだろ」


 「それはそうですが……」


 この時私は気づきました。

 自分にとって面白い方法で問題を解決しようとするこの手法……身に覚えがある筈です。


 こ い つ ら 同 類 で す !


 ジュリアンナ嬢にエドワード様の手綱を握って欲しいなどと愚かなことを何故私は考えたのでしょう。

 もし、この2人が意気投合したら?……絶対に恐ろしいことになります。


 まだ見ぬ恐ろしい未来に脅えながら、私は執務へと戻りました。


 胃薬の量を増やしたほうがよいでしょうか……。



#######



 今日は5日ぶりに我が家――イングロット公爵家へと帰ってきました。

 仕事は山積みでしたが、心の休養を取らねば心労ですぐに死んでしまう気がしたのです。


 エントランスに入るといつも通り使用人たちに迎えられます。

 パタパタと階段を駆け下りる音が聞こえました。


 「お帰りなさい、サイラス!」

 「ただいま帰りました、シェリー」


 エドワード様と同じプラチナブロンドに澄んだ蒼の瞳の女性が抱き着いてきました。

 彼女はシェリー・イングロット。

 元第一王女で次期イングロット公爵夫人つまりは私の妻です。


 「仕事は大丈夫なの?お疲れでしょう」


 小首を傾げるシェリー……なんて可愛らしいのでしょう!とても癒されます。


 「仕事は山積みですが……シェリーに会えたので疲れは吹き飛びました。そうそう今日は『リーア』にお会いしたんです」


 「『リーア』ですって?あの愚弟を敗北させた!?サイラスが疲れているのも、家に帰ってこれなかったのも全部あの愚弟のせいなのね!?あの◎△$♪×¥●&%#!!」


 私の襟首を掴んでガクガクと揺らしながらシェリーは元王女とは思えない暴言を吐いていました。

 いつも通りのその様子に安堵しつつ、つかの間の休養を私は取るのでした。






苦労人ですが可愛い嫁がいるサイラスには同情できませんね。

ちなみにシェリーとサイラスが結婚したのは王家と国王派の貴族の結びつきを強くするためという設定があります。

幼いころからエドワードに苦労してきた二人はお互いが最大の理解者であり、大切な存在です……ある意味エドワードが恋のキューピット。


次は主人公ジュリアンナ視点に戻ります!

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