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侯爵令嬢は手駒を演じる  作者: 橘 千秋
第三部 ディアギレフ帝国編
124/150

118話 合流 2



 俺はマリーとモニカ、そしてキールの泊まっているという宿へと向かった。

 宿は流れの商人や旅人の泊まる、標準的な値段のところで、俺はマリーとモニカにキールの部屋へと案内される。



「よう、エド! 遅かったな」



 王宮にいるのと変わりない態度のキールを見て、俺は呆れた目を向けた。



「暢気なものだな」


「考えるのはオレの仕事じゃないからな!」


「胸を張って言うことか。……皆、無事で良かった」



 俺は少しだけ肩の力を抜いたが、すぐに背筋を伸ばす。

 そして一人一人の顔を見て、馬車が襲撃されてから川に落ち、旅芸人を演じながら帝都へ向かって行ったこと、最後に滞在した街で怪盗にジュリアンナが攫われたことを話した。

 俺がすべて話し終えてから、マリーは静かに……しかし、ハッキリと呟いた。



「つまり、お嬢様を助けるためには、革命政府に殴り込めばよろしいのですね」


「それは良い考えです、マリーさん。ジュリアンナ様を取り戻せて、話し合いも楽に進められそうな完璧な計画です!」


「分かりやすくていいな!」


(……俺とジュリアンナの護衛は、こんなに攻撃的だったか……? 元の性格だった気もしなくはないんだが……)



 窮屈な他国での生活で、キールたちも鬱憤が溜まっているのかもしれない。

 俺は特に反対する理由もなかったので、このまま話を続けることにした。



「革命政府が指定した日付は明後日だ。ここは奴らの領域。俺たちを見つけるのも時間の問題だろう。だが、出来れば期日の前に革命政府を見つけ出したい」


「エドワード殿下とジュリアンナ様のことも、怪盗さんは知っていたみたいですし、私たちの顔も向こうは把握しているかもしれませんね」



 モニカはそう言うと、手書きの地図を取り出した。

 どうやら、俺が来る前にこの三番街を詳細な地図に書き起こしていたらしい。



「三番街の地図を書いてみました。見てください。三番街は大きく四つの区域に別れています。エドワード殿下が馬車を降りたところが商業区、私たちが今いるのは宿屋通り、その隣に位置するのが帝都の住民が暮らす居住区、そして少し離れたところにあるのがスラムです」



 モニカの指を差した区域を見ながら、俺は考えをまとめる。



(……革命政府は必ず三番街のどこかにいて、俺たちとの交渉に備えているはずだ。奴らが隠れるとしたら……スラムか商業区か?)



 俺は一番情報を得ていそうなマリーに視線を向けた。



「マリー、スラムと商業区に革命政府の手の者が潜伏していそうな場所はあったか?」


「スラムは入れ替わりが激しい場所なので、革命政府が潜伏していたとしても、見つけるのが困難です。ただ……お嬢様を連れているのだとしたら、商業区に隠れていると思います。人の往来が激しく、人や物を隠すのには打って付け。何より、貴人が紛れていても目立ちにくいですから」


「……なるほどな」 



 元暗殺ギルド出身ともあって、マリーの考えは王家から身を隠す革命政府の理にかなっている。



「革命政府の潜伏先は分かるか?」


「いいえ。それらしい人間は見かけませんでした。変装に長けた、少数精鋭で潜伏しているのかもしれません」


「そうなると……キールの出番だな」



 俺が呟くと、キールは目をぱちくりとさせた。



「オレも革命政府の奴らの隠れ家なんて分からねーよ」


「昔からキールの野生の勘だけ信用している。臭いところを嗅ぎ分けるのは得意だろ? なあ、俺の番犬」


「照れるなぁ! オレにドンと任せてくれよ」



 キールは大きく声を上げながら豪快に笑った。うるさい。



(……実際、キールが適任だしな)



 キールの率いていた第三師団は襲撃に特化した部隊で、視察に出向く度に大きな捕り物をして、ローランズ王国の治安維持に大きく貢献していたのだ。

 そんなキールの実績を知らないマリーとモニカは、ジトッとした目でキールを見ながら呟いた。


「不安しかありません」


「不安ですね」


 

 どうやら帝都までの旅路の中で、キールは彼女たちの信頼を勝ち取れなかったらしい。……まあ、それはなんとなく俺も理解できた。


 こうして、俺たちの革命政府の拠点探しが始まった。



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