二人のシアワセ《断章》
二人のシアワセ《中編》から続く物語です。
俺は、白岩涼子に呼び出されて河川敷にいた。
その前に、俺のことを紹介しておこう。
俺の名前は、山森健一。山森財閥の御曹司だ。現在は、山戸川高校の生徒会会長をしている。今回は、俺が話すより、適切な人がいるからその人に話してもらおう。ここからは、バトンタッチだ。後は、宜しく頼む。
初めまして、皆さん。今回は、私が語ろうと思います。私が誰かって?そうでした、私の自己紹介をしておかなければいけませんでした。
私の名前は、白岩涼子。白岩家の養女です。私の家は、お父さんが会社をリストラされた後に私の大切な人から仕事先を紹介してもら家のことが楽になりました。お母さんも、前みたいに夜まで働くことがなくなり楽しく暮らせています。
今回私は、自分が大切な人に私の過去の話を語った日のことを話そうと思います。今から、二年前の6月のことです。
私の名前は、白岩涼子。旧姓、矢戸神涼子。元々は、生活に困ることのない家で暮らしていた。けれど、ある日私の家族は、私を遺していなくなった。私を遺して皆死んだ。それを今日私は、自分を支えてくれている、私の大切な人に話そうと思っている。
その人の名前は山森健一。山森財閥の御曹司で川嵜中の生徒会会長をしている。私には、釣り合わない男の子です。なのに、彼はそんな私と一緒に出掛けてくれます。けれど、私はもう言わなくてはならない。大切な人に、大切だから言わなくてはならない。そんな事を思っていると山森健一君がやって来た。
「ごめん、待たせた?」
山森君は、いつものように私に笑顔で声をかける。けれど、その声も今日は、心が痛む言葉に聞こえる。だって私は、これから山森君に、大切な人に拒絶されるかもしれない話をするのだから。
「ごめんね、急に呼び出して。」
「いや、構わないよ。」
「山森君、これから私は自分の過去を語ります。何も言わずに最後まで聞いてね。」
「分かった。白岩がそこまで言うならきっと大事な事なんだと思う。俺は、白岩がそう言うなら最後まで何も言わない。それより、隣座っていいか?」
「うん。」
山森君は、私の隣に座る。
「それじゃ話すよ。」
山森君は、黙って聞いてくれている。
「『むかしむかし、ある家に可愛い女の子が住んでいました。その女の子には、優しい二人のお兄さんがいました。』」
私は、それから淡々と過去を語っていく。今の両親のこと、矢戸神家のこと、全てを語っていく。これでもう山森君に嫌われたかもしれない。私と一緒にいれば不幸になると思ってくれたと思う。なのに、それなのに、私は、
「……うっ………ひっ…………ぐっ……………えっ……。」
私は、泣いた。嫌われると思って、離れていくと思って、それでも山森君は、
「白岩………俺は………。」
山森君は私に近付いてくる。だから私は!
「来ないで!………分かったでしょ、私といれば不幸になると、分かったでしょ。だから、近付かないで。」
私は、大好きなのに、大好きで愛しくて守ってほしいのに、拒絶の言葉を言う。私は、その場から逃げた。泣きながら走って逃げた。周りからはどんな風に見えてるんだろ。山森君が、私を振ったように見えるのかな。それでも走って家まで帰る。山森君を、その場に残して。私は、家に着くと、部屋で泣いた。部屋で泣いてると、私の姉三穂が部屋に入ってきた。
「どうしたの?私に何でも言ってごらん。」
私は、三穂に今日のことを話した。全てを話した。すると三穂は、優しく微笑んで
「大丈夫だよ。涼子が心配するほど彼は、避けたりしないよ。」
「どうして?」
「彼は、生徒会会長なんだよ。その話を聞いてもきっと力になってくれるよ。」
私は、泣いて三穂に抱きついた。
これが、私の、白岩涼子の過去を語った日のことです。私にとってあの日は、大事な日でした。それでも、健一は、私を選んでくれた。だから、今、私は、幸せなんだと思う。健一となら、きっと幸せになれる気がする。でも、あの日の後に大変なことが起きていた。それは、私が語るよりも彼に語ってもらった方がいいと私は思う。後は宜しくね、健一。
そんなわけで、白岩に過去を語ってもらったわけだが、彼女が言ったように、あの日の後に大変なことが起きていたんだ。でも、今回は、それには触れない。と言うよりも、今触れるよりも、この後に触れた方がいいと俺は思う。
そんなわけで、今回はこの辺でさよならかな。
次に期待してくれ。じゃあ、またな。
後編に続く