-閑 話- 迷宮のお風呂代わり
短いし、本編に入れるほどの内容ではないですが、迷宮での暮らし(?)のイメージを作るエピソードとして、閑話という形で入れてみました。
汚物処理システムの設置を終えて、居間に戻ろうとする僕に、アレレッティが、再度、声をかけてきた。
「ガルドゥーニ様、お持ちください。ダンジョンの掃除屋‘クリーンスライム’には、実はもう一つの使い方があるのです。」
そう言うとアレレッティは、一匹のクリーンスライムを蹴りながら僕の前へと動かしてくる。僕の前まで来たクリーンスライムを、今度は力一杯と言った感じで蹴りつける。蹴られたクリーンスライムは僕の方へと跳び上がり、僕の体を頭から包み込んでいく。
クリーンスライムスライムの半分透けたグリーンの体に全身を包まれた僕は、パニックになり、手足をバタバタさせてもがく。息が苦しくなるギリギリくらい1分はたたないくらいで、クリーンスライムは僕の体から離れた。
「何をするんですかっ!危ないし、ビックリするじゃないですか!」
と叫ぶ僕に、アレレッティは落ち着いた感じでこう返事をした。
「驚かせてしまって、申し訳ございません。大丈夫ですよ。クリーンスライムは生きている物を溶かしたり、食べたりする能力はありませんから。それに、どうですか。体がサッパリとされていませんか。」
そう言われてみると、なんだか体がサッパリしているような気もする。
「ダンジョン内に住む魔物たちの中で頭の良いものは、こうやってクリーンスライムに包まれて汚れや垢をとらせて、体をキレイにするのですよ。下手にお風呂に入るよりも短い時間で全身をキレイにすることができます。覚えておいてください。」
こうして、ダンジョンでの体の洗い方(?)を僕は覚えたのであった。
余談だが、クリーンスライムを使わなくても、水さえ用意できれば、ダンジョン内でもお湯を沸かしてお風呂に入ることも可能なようだが、早いしキレイになるし、前後の準備や片付けもいらないので、ほとんどの魔王はクリーンスライム浴で済ませてしまうそうだ。