第06話 ダンジョン作成作業中
今回、だいぶ説明的になってしまっています…。
7月5日、修正しました。
ミスリル鉱石と銀鉱石の発見という予想外のラッキーな出来事のおかげで、僕は多くのDPと資金を手にすることになった。そして、ミスリルを扱う秘術を持つコボルドを召喚し、ミスリル鍛冶屋をダンジョン内においてミスリル製品の生産ができることにはなった。しかし、なんでも一気にできるわけではないし、多くのことを同時にできるわけでもない。
ミスリルの件は、とりあえず、後回しにすることにして、まずは、最初のプラン通りにダンジョンを作り、その上で、ミスリル工房を置いたり、追加の設備や魔物を配置することにした。
ということで、まずは、ギムスに銀鉱石を引き取ってもらい、ミスリルは、邪魔にならそうなところに倉庫を作り、DPを使ってまとめて移動させる。ギムスは、「銀鉱石の代金は、後ほど計算をしてお支払いいたします。」と言い残して、銀鉱石と共にスーッと消えていった。それを見送ってから、僕は、当初のプランに基づいてのダンジョン作成を再開する。
まずは、坑道とのつなぎ目から3つ並びで作った部屋の一番坑道側の部屋の2つの入口に扉をつけ、坑道との境目にエアロック的な部屋を作った。この部屋は、今はただの空き部屋だが、後々、僕のダンジョンが立派に成長すれば、大事な役割を担う予定の部屋だ。そして、その部屋の続きの部屋のダンジョン入口側のドアから見て左手に、もう一つ部屋を作る。この部屋との境目は大きな入口にし、ドアではなく大きな鉄格子を付ける。この奥の部屋には、後でジャイアントスコーピオンを配置する予定だけど、まずは部屋作りから進めるつもりなので、次に進む。DCを仮置している部屋の奥の扉からグーッと通路を伸ばして、後で、部屋を追加できるようにしてから、通路の奥に大きめの部屋を作って、DCルームにしてDCをそこに移した。
新しいDCルームの奥からも通路を伸ばして居住区用の部屋をいくつか作り、僕の寝室や居間、台所などを配置していると、いつものように姿を消すでもなく、僕のダンジョン作りを静かに眺めていたアレレッティが声をかけてきた。
「ほぼ当初の予定通りに進んでいるようですね。ガルドゥーニ様。私、大事な大事なことをご説明するのを忘れておりました。」
そういって、アレレッティが僕に説明を始めたのは、ダンジョン内の排泄物や生活排水、そして死体などの処理についてだった。当たり前のこであるが、ダンジョン内に住む者は僕を始め、すべての生き物が食事をし、排泄をする。ということは、当然、排泄物や食べ残しなどの汚物が出る。それを放っておくとダンジョン内はたいへん汚くなり、臭いがダンジョン内にこもって、たいへんなことになってしまう。そうならないために、ダンジョンに必ず一つは作らないといけない部屋があり、必ず配置しないといけない魔物がいる。それは、‘不浄の間’と呼ばれる部屋とダンジョンの掃除屋‘クリーンスライム’というものだった。
不浄の間は、4つの魔法陣と一つの貯水槽からなっており、ダンジョン内を這いずり回り汚物を回収してきたクリーンスライムは、この部屋に来ると、魔法陣に乗る。そうすると魔法陣が汚物をクリーンスライムの体内から貯水槽に移す。こうして、ダンジョン内の汚物は不浄の間に集められ、貯水槽の底にある魔法陣の一つが負のエネルギーへ変換し、蓄積していく。
ダンジョン内の死体については、クリーンスライムの亜種である‘ポータースライム’が回収し、やはり不浄の間へと運ぶ。運ばれた死体は、やはり貯水槽の中に入れられる。そして、貯水槽の底にあるもう一つの魔法陣が、汚物の変換で貯められた負のエネルギーを使って死体を徐々にアンデッド化させていく。アンデッドとして動けるようになってすぐに貯水槽から出された物は“ゾンビ”として、全ての肉が分解されるまでつけられていた物は“スケルトン”として、使うことができる。
また、最後の魔法陣が死体の怨念を部屋に溜め込む。溜め込んだ怨念をまとめて死体に注入することで、より強いアンデッドを作ることも可能なのである。
こういう内容であった、それを頭の中で整理し、アレレッティに返事をする。
「ん〜、ようするに、汚物関係はクリーンスライムが集めてくれて、死体は自動でアンデッドにしてくれるから、不浄の間を作らないといけない!ってことですよね。それにしても、勝手に死体をゾンビやスケルトンにしてくれるってスゴいシステムですよね。これって、ダンジョンにみんな作ってるんですよね?DPはそんなにかからないんですか。」
「スゴイですよね。こちらは、私どもダンジョン商会が、長い年月をかけて、魔術師、錬金術師、死霊使術師の皆様と共同研究を重ねた成果なのでございます。」
アレレッティが今度は、この‘汚物処理アンデッド自動生成システム’の歴史について、話をしてくれた。
‘汚物処理アンデッド自動生成システム’は、最初からこういうものを作ろうとしてできた物ではなく、もともとは偶然の産物なのだそうだ。最初は、各ダンジョンにクリーンスライムが汚物を集めてくるゴミためを作っていて、一つがいっぱいになったら、新しいゴミためを作って使う。という感じで汚物の処理をしていた。そんな時、とある魔王のダンジョンで、『ゴミために捨ててあった死体がいつのまにか勝手にスケルトンになって動き出していた』、という事件が起こった。何故、スケルトンが自然発生したのか?、その謎を調べた結果、ゴミための物から発生した負のエネルギーが、死体に宿りいつの間にかアンデッド化していたという事実が分かった。それを効率良く行うことができれば…、ということで始まった研究の集大成が、今の‘汚物処理アンデッド自動生成システム’なんだそうだ。
そして、僕が心配した通り、本来であれば、このシステムの設置には、多くのお金かDPが必要なのだそうだ。しかし、新しい魔王たちが快適にダンジョンを運営できるように、そして、死体をうまく使って少しでも活躍できるように、ということで、最初の一個目はマスターである神々からの贈り物ということになっていて、無償でもらえるということだった。
「さぁ、サリバーン様に感謝しつつ、不浄の間の設置とクリーンスライムの召喚を済ませてしまいましょう」
アレレッティにそう言われ、僕らは、出来上がっているダンジョン部分から、外の空洞部に出た。今後、ダンジョンをどう発展させていくかはまだ決まってないから、設置場所に悩んだけど、DPを使えば、ダンジョンの構造を変えたり、部屋を別の場所に移したりも簡単にできるそうなので、とりあえずDCロームから通路を伸ばして、その先に不浄の間を設置することにした。
DPadを操作して現れた不浄の間は、10m四方くらいの部屋に、深さが2mくらいの貯水槽があった。貯水槽には50cmくらい水が入っていたが、まだ水がきれいなので、底で3つの魔法陣が鈍い光を放っているのが見えた。部屋の出入口は、3つあり、2つはスライムたちの出入り用の特殊な物、もう1つは人が出入りするための物だが、どれもこの部屋の空気が出来るだけ外にもれないような工夫がされていた。
不浄の間を設置した後、インプたちが地図を完成させたら取り込む予定の坑道の掃除のことも考えて、クリーンスライムを10匹と、ポータースライムを2匹、召喚し取り込み、さらにスライムたちに不浄の間の場所を登録して、ダンジョンの汚物処理システムの設置を完了させた。
インプに続いて、ようやく次の魔物たちとして、2種類のスライムが登場しました。