第03話 ダンジョン作成準備(プラン作成)
3日ほど、dPadとにらめっこをしながら、手持ちのDP・資金でどんな初期ダンジョンができるかひたすら悩んだ。
作るだけではなく維持していくことも考えると最初はあんまりたいしたモンスターは配備できそうにない。トラップ中心に冒険者を仕留めることも考えたが、討ちもらすとダンジョンの情報が洩れて、どんどんやりにくくなるし…。どうしようと悩みながら、DP獲得目安表を見てみる。ダンジョンに侵入してくる冒険者を仕留めたり、人間の村を侵略しなくても、アイテムを作成してダンジョン商会に販売したり、ダンジョン内で魔物を育成することでも、DPを獲得できるらしい。
生産・育成系は、殺戮や侵略ほどバンバンDPが入るわけではないけど、人間の侵略をうまくかわすことができれば、地味に確実にDPを稼いで、長くダンジョンを経営できる形のようだ。
生産・育成系でのんびりまったりやることに決める。まずは、どんなモンスターが必要か、どんな道具が必要かを自分でじっくり調べることにして、アレレッティにダンジョン立地の候補地として、できるだけ人里離れた廃鉱か鉱山跡地はないかを調べてくれるように頼んだ。
それから、1週間、リストやカタログを見ながら、あーでもないこーでもないとさんざん悩みながら、最初のダンジョンの形がほぼ出来上がった。それをdPad内のマインドマップアプリで整理しながら、初日に備える。といっても、まだ、40日近くあるみたいではあるが…。
アレレッティからも、ダンジョンの立地場所について良い場所が見つかったという報告が来ていた。
「ガルドゥーニ様、ダンジョンの立地場所ですが、良さげな場所がございましたよ。もともとは銀の鉱山だったのらしいんですが、100年以上前に瘴気のかたまりを掘り当ててしまい坑道内や鉱山村や近くの森まで瘴気に犯されて、住民が避難した過去のある場所がありました。
現在は、瘴気もだいぶ薄れていますし、冥界のものにとっては瘴気は大歓迎ですので、まさに迷宮を作るのにはうってつけです。過去の瘴気事故の影響で現在も『入らずの森』として忌避されている森の奥にありますので、人間どもが侵入してくる危険性もかなり低いと思われます。いかがですか。」
その場所は、大陸の東の端の小さな半島にあった。鉱山と広い森、近くには大きな川もあり、だいぶ離れた川の下流域には人間の街や村がある。『入らずの森』の奥という立地条件がすごく気に入って、
「じゃ、そこで!」
と僕は、即決していた。廃鉱というか放棄された鉱山跡ということで、もしかしたら、まだ銀の採掘も可能かもしれない。そうなると、DPや資金も貯めやすくなる。いい場所が見つかって良かったとホッとしつつ、アレレッティに相談をしながら、迷宮作成初日に向けて、僕は、ゆっくりと準備を進めていくことにした。
「それでは、ダンジョン内でのアイテムの作成と魔物の育成を中心にゆっくりとDPを貯めながら、じっくりと成長をしていく形のダンジョンを目指されるということで、よろしいですね。
初期の魔物としては、アイテム作成用の武器防具作成にコボルド・クラフトを、薬やポーション類の作成用にインプを購入し、武器防具やポーション類をダンジョン商会に販売する。そして、繁殖用の魔物は、コボルドと魔狼を購入して、数を増やしていく。そして、ガーディアンとして、コストが安い割に強いジャイアントスコーピオンを購入し、最後の守りとする。
ジャイアントスコーピオンは、なかなか良い選択だと思いますよ。
ほとんど知能がないので、命令もきかないし、常に飢えていて攻撃的なため他の魔物との共生も不可能というマイナス面も大きい魔物で使い勝手が悪いため、評価の低い魔物ですが、硬い外殻の守りと巨大なハサミに強い麻痺毒をもつ尻尾の針を武器とした高い攻撃力を誇り、生命力も高く戦闘能力は非常に高いです。
普段は、鉄格子の奥に閉じ込めておいて、いざという時だけ鉄格子を開けて侵入者と戦わせれば、低レベルの冒険者では太刀打ちできない強力な門番として十分期待できますし、危険もないですからね。
この形でダンジョンを作れば、しばらくは、ゆっくりとアイテムの生産と魔物育成をしながら、ご自分の魔法の勉強に時間を使うことができると思います。最初から、立派なダンジョン強い魔王様なんていないんですから、気長にいきましょう。」
こうして、ダンジョン作成のプランを立て終えた僕は、次に自分の能力の強化について考えた。「どうせ生産・育成系のダンジョンで、ほぼ戦闘するをことはない状況を作ったので、戦闘能力を強化する必要はない。ならば、アイテム作成や魔物の育成に役立つ能力を身に着けよう」と考え、魔術と錬金術を使える魔導師をメインの職業とし、様々な知識を身に着けられる鑑定士、薬草集めや薬づくりに役立つ薬師、魔物を育成するのに役立つ魔物使い、弓も使えるようになってダンジョン外での採集活動に役立つ狩人の4つの職業をサブ職業にすることにした。
「成長が遅くなりますよ。といっても職業は、しょせん称号のようなもので、実力については、実戦であったり、練習・学習を積み重ねていくしか成長のしようがないんですがね…。」
とアレレッティには忠告されたが
「不老不死なんだから、少しずつ学習や訓練を積み重ねて、じっくり時間をかけて成長していけばいいんじゃないかな」
と答えて、あっさり忠告は無視することにした。それぞれの職に就くための基本的な知識や技能を、DPを使って一つずつ習得していき、必要な道具を揃え、晴れて、“鑑定もできて薬も作れて魔物をてなづけられて野外での活動もできる魔導師”になった僕は、準備を万端整えて、“名もなき世界”へ侵入する日を迎えるのであった。




