第02話 ダンジョン作成準備(基礎知識を学ぼう)
7月2日 加筆•修正しました。
「それでは、いきますよ」
とアレレッティがいい、dPadを操作すると、見慣れない文字と聞きなれない発音の言葉が、ものすごい勢いで僕の頭の中に流れ込んできた。そして、アレレッティの差し出すdPadの画面を見ると、今まで、読めなかった文字が読めるようになっていた。
「この間、来られた魔王様は、『マ○リックスのインストールのシーンみたい』だっておっしゃってました。私には分からないんですが、ガルドゥーニ様には分かりますか。」
「あぁ、そう言われれば、そんな感じだねぇ。DPを使って何かを憶える時は今みたいな感じなの?」
「私は、使ったことがないのですが、『一気に頭に流れ込んでくる感じ』だそうですね。
さて、これで、事前段階は終了でございます。
まずは、DPと資金の残高をご確認ください。
あっ、先ほど、ご説明を忘れておりましたが、魔王様が得られたDPと資金(の利益)の一部は自動的にマスターである神様に分配されます。サリバーン様は、そこらへんにあまりこだわれない方なので、最低ラインの10%がサリバーン様への上納分となります。
サリバーン様は、上納分のDP・資金をほとんど使われることなく、次の魔王様の最初のDP・資金として配られるので、ガルドゥーニ様のDPと資金は、他の魔王様に比べるとだいぶ多いですよ。前の魔王様が、かなり稼がれましたからね。」
そう言われて、僕の手持ちを確認すると、DPが2,525ポイント。資金が金貨250枚だった。
「DPはよく分かんないから置いといて、金貨250枚はどれくらいの額なの?」
「そうですね。人間の大人の1日分の生活費が銀貨1枚と言われますから、普通の人間の70年分の生活費くらいでしょうか。って言われても、分かりませんよね。だいたい普通の魔王様の初期資金が金貨100枚程度、DPは500ポイントくらいですので、資金で2.5倍、DPは5倍くらいは恵まれているとお考えになってよろしいかと思いますよ。」
「そっか、だいぶ恵まれているんだね。とりあえず、dPadを触ってみていいかな。」
と言うと、
「よろしいですよ。
魔王様が‘名もなき世界’に侵入できるタイミングは100年に一度だけ、次の侵入の機会は50日後になります。それまでは、こちらの仮の魔王部屋で待機していただきつつ、dPadの操作に慣れていただいて、また、迷宮つくりの下準備をしていただければと思います。何かございましたら、お声かけください」
そう言って一礼すると、スーッとアレレッティの姿は消えていった。
dPadの画面に表示されているアイコンは、
・ステータスの確認
という謎の項目。
・DP確認
・DP操作(スキルの習得)
・DP操作(魔物の召喚)
・DP操作(迷宮の作成)
・DP操作(その他の奇跡)
・獲得DP目安表
などのDP関連のもの。
・資金確認
・ダンジョン商会カタログ(魔物編A)
・ダンジョン商会カタログ(魔物編B・特殊)
・ダンジョン商会カタログ(武器・防具編)
・ダンジョン商会カタログ(迷宮素材編)
・ダンジョン商会カタログ(奴隷編)
・ダンジョン商会カタログ(人材派遣編)
・ダンジョン商会カタログ(食材編)
・ダンジョン商会カタログ(その他編)
・トレード
などのダンジョン商会との取り引きに関わるもの。
・初心者のための名もなき世界 世界地図
・初心者のための名もなき世界の歴史
・初心者のための名もなき世界の基礎知識
といった知識関連のもの。
・魔法陣管理
・魔物管理
・ダンジョンEYE
といった迷宮管理に関するものなど。
いろいろなものがズラッと並んでいた。
まずは、ステータスの確認の画面を開いてみることにした。
するとRPGのステータス画面のそのものが開いて、僕のものと思われるステータスが表示された
名前:ガルドゥーニ=ラ=ソーム
種族:魔王(人間)
職業:なし
レベル:0
性別:♂
年齢:36歳
能力値:E+
力:F(やや低い)
敏捷性:F(やや低い)
体力:F(やや低い)
生命力:E(平均並み)
知力:B(かなり高い)
知識:C(高い)
魔力:D(やや高い)
抗魔力:D(やや高い)
精神力:D(やや高い)
幸運度:B(かなり高い)
総合評価ランク:G
ダンジョン名:なし
ダンジョンの所在地:なし(シークレット)
ダンジョンレベル:0(なし)
魔物数:0
最強の魔物:なし
ダンジョン評価:★★★★★(なし)
僕のステータスはこんな感じらしい。ゲームでいうと戦士や盗賊よりかは魔法使い系といった感じだろうか、たまにジョギングをする程度のゲーム好きなおじさんのステータスはこんなもんなのかな。ってところで納得しつつ、職業っていうのが気になったので、アレレッティに聞いてみようと思い、
「アレレッティ、アレレッティ、質問があるんだけどぉ~」
と叫んでみると、
「そんなに大きな声を出さなくても、聞こえているから、大丈夫ですよ」
と言いながら、スーッと姿を現したアレレッティが、一礼しながら問う。
「さて、ご質問は、どのようなことでしょうか、ガルドゥーニ様」
「あのステータスのところに職業ってあって、職業なしってなってるんだけど…。どうやったら職業につけるの?あと、どんな職業があるの?」
「なるほど、ごもっともなご質問ですな。私が解説をするよりも、dPadの中に‘初心者のための名もなき世界の基礎知識’というアプリがございます。その中に職業の説明の項目がございますので、そちらをご覧いただいた方が、分かりやすいと思います。それでは…。」
それだけ言うと、アレレッティは、また、スーッと消えていく。
さっそく言われた通りにdPadの‘初心者のための名もなき世界の基礎知識’というアプリを開き、名もなき世界の職業についてという項目を開く、そのアプリによると、
職業は、メイン職とサブ職に分けられ、メイン職の中にも基本職・複合職・特殊職の3種類があるらしい。
メイン職は全部で12個で、基本職は、戦士・盗賊・僧侶・魔術師・錬金術師の5つ、複合職は、魔法戦士(戦+魔)・神官戦士(戦+僧)・賢者(僧+魔)・魔導師(魔+錬)の4つ、特殊職は、騎士・侍・忍者の3つ。
サブ職は、鑑定師・薬師・魔物使い・狩人・楽士の5つで、いくつでも兼業できるが、サブ職が増えると成長が遅れるらしい。
なぜか、戦闘やダンジョン探索、に関わるようなものだけが職業として認定されているらしい。職業に就くのに、特別な儀式やアイテムは必要ないらしいが、その職業の基礎的な知識や最低限の技能を身に着けていないとその職業に就いたと認定されないらしい。
とりあえず、何の知識も技能も身に着けていない僕は、無職で、職に就くにはDPで何らかの知識や技能を身に着けるか、師匠を雇うか買うかして習わないといけないらしい。
自分が無職で、職に就くのはいろいろとめんどくさそうなのを確認した僕は、DPでどんなことができるのかを確認するために、DP操作のアプリを開いていろいろとのぞいてみる、様々な知識や技能の習得や品物の獲得、ダンジョンを作ったり、魔物を召喚したり、天然の魔物を取り込んだり、アイテムに魔法を付与したり、自分の能力を強化したり、本当にいろいろなことができるようだ。
今後、迷宮を運営したりいろいろなことをしていく上で、まずは、この世界に関する基礎的な知識があった方がいいと思った僕は、この世界全体(‘多界世界’と呼ばれているらしい)の基礎知識と迷宮運営の場となる‘名もなきなき世界’の基礎知識を習得することにした。
神話や神々の知識、様々な種族やそれらの種族の住む世界のことなど多界世界の様々な知識・情報と名もなき世界の大まかな地理や過去の聖と魔王の争いの表に出ている大まかな情報などが、頭の中に一気に流れ込んできた。
どうやら名もなき世界は、55%ほどの地域に人間を中心とする光の神々の眷属がはびこっているらしい。残りの約12%が闇の神々の眷属の支配領域ということだが、人間たちがはびこっている。そして、残りの30%は、神々の争いの時代に放たれた獣や魔物がはびこる未開地になっている。とはいえ、光の神々の支配地域の全てが“聖”の支配する国家や街というわけではないらしく、人間の街や国同士の間でも領土などをめぐって争いが起きているらしい。
また、55+12+30=97ということで、3%ほど足りないのだが、それは、もともとは聖や魔王だったのに力をつけ過ぎて、神々のくびきから抜け出した‘オーバーロード’と呼ばれる存在がいて、その‘オーバーロード’たちの支配している領域が、その3%なのだという。
基礎知識を身に着けたことで、自然と、いろいろなものの相場やDPの相場のイメージもつかめたので、あとは、何ができるのか、何が買えるのかをじっくり考えようと、それから、3日ほどは、dPadとにらめっこをする日々が続いた。
その中で見つけたdPadの歴史という文章を読むことで、深く考えずに使おうとしていたDPとdPadについてもいろいろなことが分かった。
DP=ダンジョンポイントとは、大神が闇の神々(冥神)の使徒たる魔王が迷宮を作るために様々なことをするために与えらる一種の奇跡の引き換え券のようなもので、それはDCに吸収され蓄えられる。DCは、DPを吸収することで少しずつ成長し、より多くのDPを蓄えられるようになったり、より高位の奇跡を使えるようになっていくらしい。
昔は、DCの前で念じたりすることで、DPを使って奇跡を起こして、迷宮を作っていたのそうだ。ダンジョン商会が作られた後、より良い迷宮をより効率的に作れるように研究が進めら、DCから離れたところでも迷宮作成作業ができるように、そして、迷宮作成以外にも数多く存在するDPの奇跡を使いこなせるようにするために、作られたのがdPadだったそうだ。
どこでも、迷宮作りができ、様々な知識や技能、そして魔物たちの言葉の習得など自分自身の強化が簡単にできるのもdPadのおかげなんだなぁと、単純な僕は深く感心してしまったのであった。