第15話 犬人《コボルド》の処理
8月5日、加筆修正しました。
コボルドの取り込みによって、一気に数が増えたダンジョンの魔物たち。コボルドたちにもそれぞれ個性があり、得手不得手がある。それを確認しながら、群れのボスであるボルトに話をした上で、一部に役割を割り振る。
もともと狼の世話をしていた3匹のコボルドたちは、ウォルフガングのもとで狼の飼育を担当させることにした。そして、戦闘の時には気付かなかったが、弓を使える者もいたようで、弓を使える2匹もウォルフガング一家とともに外に出て狩りをさせるようにする。
食糧については、魔法陣から出てくるネズミとダンジョン商会からの購入で十分にまかなえる。だが、経費節減につながるし、食料だけでなくいろいろな物を入手できるだろうということで、狩猟や採集活動もしていくつもりだ。
狩猟や採集の際に、マッパー役のインプたちを着いていかせて、地図を作れば、今回取り込んだ坑道以外でも、野原や森、山などでもダンジョンの一部として取り込むことができ、自分の領域とすることができる。狩猟・採集兼探索は、これからも非常に重要な活動の一つと言えるだろう。他の者については、オスは他の仕事が出てくるまでは、ゴズール・メーズルのもとで戦闘訓練を受けさせることにした。
コボルドたちを一通り面接し終わった後で、コボルドたちの住み処にもネズミを定期的に発生させる魔法陣を1つ作ってやる。働かずに食わす気はないが、狩猟・採集は食料の確保だけが目的ではないので、まずは、最低限飢えることのないようする。その上で、獲物や収穫があれば、プラスアルファのご馳走が得られる、そんな状況を作って、出来るだけ積極的に狩猟・採集に行きたがるようにしたつもりだ。
ネズミの魔法陣を作り終えた頃には、とっくに昼を過ぎていた。食堂に戻り、イチローの作ってくれた昼食を食べていると、
「料理をしたり、洗い物をしたり、醤油や味噌などの調味料を作ったりなど、いろいろすること、してぇことも多いんでな。手が空いているコボルドの中に使えそうなものがいれば、1,2匹助手につけてもらうことはできねぇかな。」
と、イチローが申し出てきたので、
「コボルドたちは、余っているから、助手をつけるのはかまわないよ。ただし、助手として使うからには、料理や調味料作りをしっかりと仕込んで欲しいな。大丈夫かい。」
「あいよ、キッチリ仕込んでやるから、任しときな。」
「分かった。役割を振らなかったものの中から、2匹選んで助手に使ってもいいよ。」
そんな感じで許可を出し、僕は、食堂を後にした。
食事を終えた僕は、いろいろと話し合いや打ち合わせをすることができるように新たに作った会議室に、ボルトを呼び出して、坑道の外の様子のことを尋ねた。
「この鉱山の外の様子はどうなっているんだい。狩なんかで外に出ることもあったんだろう。」
「俺たちは、俺のオヤジのオヤジのオヤジの頃から、ここに住んでいる。
ここ、人間の住んでいるところ遠い。人間来ない。
ここ出る。すぐ近くに人間の巣の跡がある。誰もいない。壊れてる。
山降りる。広い森。人いない。動物多い。俺たち狩りをする。でも、熊いる。熊強い。俺たち、かなわない。」
事前のアレレッティの情報通り、外には村の跡があり、広大な森が広がっているようだ。坑道内に瘴気は薄っすらとしか残っておらず、100年前に掘り当てたという瘴気の塊がいったい何なのかは、その正体は調べようもないが、やはり近くには人間は住んでいないようだ。
ウォルフガングとコボルドたち、インプたちに探索パーティーを組ませて、まずは、村の跡を、そして森を少しずつ探索させて、ダンジョンに取り込んでいこう。そう思いながら、森のこと、コボルドたちのことなどをボルトに尋ねて、自分の頭の中で情報を整理していった。が、人間たちから侵略される心配もないので、ダンジョンの作成を急ぐつもりのない僕は、この日はそのまま何もせずに夜を迎えた。
迷宮生活4日目から、しばらく僕は取り込んだ坑道の詳細の確認や今ダンジョン内にいる魔物たちとの暮らしに慣れること、このダンジョンの周囲の環境の把握などを行った。
坑道の中は、100年近く放置されていたため、一部に天井が崩れそうになっていたり、ジャイアントワーム《大地虫》の掘った穴とぶつかって地下水脈とつながっている場所があったりした。地下水脈はインプたちに探索をさせると、地底湖(といっても湖というよりは池といった程度の大きさだが)につながっていた。特に魔物は住み着いたりはしていなかったが、今後、水棲系の魔物を育成したりするのにも使えそうだ。
鉱山の入口から、歩いて30分もかからないところに、村の跡はあった。もとは人口4,500人程度の村でそれなりの設備もあったのであろう。だが、100年も放置されていたので、建物もたいがいは崩れていて使えなそうだった。それでも、今後の活用を考えて、村の跡もすべて、dPad上で地図を作って、ダンジョンへと取り込んだ。
鉱山では、坑道の補修とダンジョン本体への侵入を防ぐための坑道の迷宮化、採掘が出来そうな場所での採掘作業の開始を目指す。そして、村の跡では、ミスリルの精錬・加工を中心とする鍛冶場を作る。その作業を進めている間に増やせる魔物は増やし、育てられる魔物は育てていく。とりあえず、そういう方針でダンジョン作成の第二段階を進めていくことにした。