第12話 坑道の住人
第12話を書くにあたって、第04話を加筆・修正しました。
リーダーインプのイーニーは第04話‘改’で登場しています。ご確認ください。
料理人イチローを買って、今夜の夕食の心配もなくなった僕が、調理場からDCルームに戻り、最後の師匠である人狼のウォルフガングの購入を取り掛かろうイスに座った時、dPadが急にブーッ、ブーッっとアラームのような音を響かせた。何事かと思って確認するとl、坑道の探索をさせていたインプと繋いであるアプリ‘ダンジョンアイ’がリーダーインプのイーニーから緊急連絡があることを、示していた。
なんだろうと思って、1匹のインプの視線と繋ぎ、そのインプからイーニーに話しかけさせる。そうすると、イーニーは、坑道の先の方を指し示しながら、足跡や臭いから、この先には人型の生き物(おそらくコボルドだと思われる)が住み着いているようだと報告をした上で、数が分からないし、自分たち5匹のインプとコボルドでは戦っても勝負にならないので、どうしたらいいか。と指示を求めてきた。
インプたちの作った地図を確認すると、第二層、第三層の地図は完成していて、第一層もかなり出来上がっているようだった。だが、まだ地上に通じる出口が見つかっていない。コボルド(?)たちは、坑道の出口付近を住処として使っているようだ。とりあえず、見つからないように慎重に、住み着いているのが何者かを確認することと、可能であれば出口を探すこと、そして、万が一、見つかったら全力で逃げること、インプたちに3つの指示を出した僕は、アレレッティを呼び出してアドバイスを求めた。
「坑道にコボルドが住み着いてたみたいなんだけど…、どうしたらいいかな」
「コボルドですか。今の戦力を考えれば、余裕で対処出来る存在だと思います。ちなみに、ガルドゥーニ様は、どうお考えですか」
「う〜ん、まぁ、数にもよるんだろうけど…。ゴズール、メーズルにヨンボス、ソフィーナを連れて行けば圧倒できそうだよね。ゴズールたちの力とヨンボスたちの魔法で、脅して、服従を誓わせて、取り込もうかと思っているんだけど、どうかな」
「それで、よろしいかと思いますよ。コボルドは、戦闘能力は低いですが、いろいろと使える魔物ですので、殺すよりは取り込んだ方が賢明でしょう。」
「そうだね。ありがとう。ちょっと自信がなくて、確認したかったからさ。」
「お客さまへのアドバイスも私の仕事ですので、お気になさらずに。」
そんな会話をしていると、イーニーから、住み着いていたのは、やっぱりコボルドだった。そして、数は20匹近くいるようだ。
と連絡が来た。とりあえず、見つからないように出口を探すよう指示を出して、コボルドを取り込みに行くための移動手段を確保するために、前から目をつけていた魔物を召喚することにした。
dPadを操作して、魔物を支配召喚する。
僕の目の前に現れたのは、ピンク地に白で縞の入ったどハデな模様の体調1mほどの大きな猫だ。‘チェシャ猫’、この大猫は、そこそこ知能が高く人語を解し、空間転移能力を持つ特殊な猫で、その能力からもなかなか捕獲されることのない珍しい魔物なのである。
元の世界にいた頃から猫好きだった僕は、支度部屋で準備をしている間に、良い猫型の魔物がいないか検索しているうちに、この魔物を見つけ、その能力と共に惚れ込んでしまった。しかし、召喚するにはDPが高すぎて、当分は無理だろうとあきらめていたのだが、昨日の幸運で多くのDPを獲得した今なら…、と考えて、そして、ダンジョン内での移動手段としても非常に有用であると考えて、急遽、召喚することにしたのだ。
「はじめましてニャ、ご主人様。カトゥスだニャ。よろしくお願いしますニャー」
そう微妙な冥語で挨拶をすると、イスに座っている僕の足にスリスリと顔を擦り付けて、ゴロゴロと喉を鳴らし始める。僕が、喉や耳の裏を指でコチョコチョしたり、頭や背中を撫で回して癒されていると…、質問に答えた後も、姿を消さずにDCルームに残っていたアレレッティが、注意を促すようにか、「オホン」とひとつ咳払いをした。
チェシャ猫を触りたくるのに、夢中になっていた僕は、その声で我にかえり、慌ててチェシャ猫を連れて部屋を飛び出して、ゴズールたちや、ヨンボスたちのところに走っていった。
みんなを集めた僕は、バラバラに招いたのでお互いのことを知らない4人の師匠たちと、その弟子2人、料理人のイチローまで含めて、一通りの顔合わせをしてもらう。そして、ダンジョンと地上とを繋ぐ坑道にコボルドの群れが住み着いているので、そいつらを取り込んで、配下に置きたいので力を貸して欲しいと、状況を説明した。




