第09話 師匠を招く(2)
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魔術師ヨンボスと、錬金術師ソフィーナとの細かい条件の確認・交渉を、ダンジョン商会に任せた僕は、アレレッティが準備してくれたリストの残りの確認に戻る。
3人目は、純血の人狼族のウォルフガング。戦士としてもかなり強いようだが、魔物使いとして、そして森での活動を得意とする狩人しても、かなり優秀なようだ。
こちらは、獣人界での獣人同士の勢力争いで敗れた一族が奴隷という形で販売されていた。妻と息子2人と、4人でのセット販売となっている。
純血種の人狼族といえば、魔物のランクでも上位のBランクの魔物だ。ダンジョンの戦力として、そして、僕の師として、かなり役に立ちそうだ。しかし、それなりの値段がする、けっこう悩んだ末に、‘2人の息子たちに嫁をさがしてきて繁殖させれば、良い値で売れて回収できるかもしれない’と考え、結局、購入することにした。
4人目と5人目は、武術を極めようと修行に励む鬼族、牛頭鬼のゴズール、馬頭鬼のメーズルの兄弟だった。
今のところ、戦力といえるのがジャイアントスコーピオンしかいない僕のダンジョンのDCを守る門番として、そして、僕の棒術の師として、アレレッティが選んでくれた魔物だ。なお、牛頭鬼、馬頭鬼は鬼族の中でもレアな存在であり、牛頭鬼はよくミノタウロスと混同されるが、牛頭鬼は鬼族の獣頭鬼であり、ミノタウロスは亜人族のオーガに近い大型の亜人である。この2人については、DPでの召喚だ。
ダンジョン商会に任せる分は、アレレッティが処理をしてくれるので、僕はゴズール、メーズルの召喚に取り掛かる。召喚を始めようとすると、アレレッティが、
「今回、召喚されようとしている牛頭鬼、馬頭鬼は今までの魔物のような単純な魔物ではなく、それなりの知能を持っています。それに、戦闘能力的にもガルドゥーニ様よりもはるかに高い能力を持っています。ですので、通常の形で召喚をするのではなく、最初から服従をさせた形で召喚をされた方がいいですよ。あと、鬼語の習得もお忘れなく。」
とアドバイスをくれた。DPを使った召喚では、ただ呼び出すだけではなくて、より多くのDPを使って最初から服従をさせた状態で呼び出すことも可能なのだ。
高位の魔物、高い知能を持った魔物の中には、呼び出された相手に服従することなく、召喚主を殺してしまうこともある。そのため、自分の実力が低いうちは、ランクの高い魔物を召喚する時に、十分な注意が必要なので、アレレッティがわざわざアドバイスをくれたのだろう。
まずは、鬼語での会話をできるようにした上で、魔王ではあるが実力の伴わないことを自覚している僕は、素直に多くのDPを消費して、服従をさせた形で2人の鬼族を召喚した。
体の一部を護るだけの簡素な革鎧を身につけた真っ赤で大きな体の上に、牛と人を足したような頭をのせた牛頭鬼、馬と人を足したような頭をのせた馬頭鬼、2人の鬼族が僕の前に姿を現す。一瞬、ボーっとしていた2人だが、やがて僕の前に跪き、鬼語で挨拶をし始めた。
「はじめまして、魔王様。牛頭鬼のゴズールです。」
「はじめまして、魔王様。馬頭鬼のメーズルです。」
『よろしくお願いします。』
と。
「ゴズール、メーズル。こちらこそ、よろしく。
当面は戦いがあることはないと思うが、おまえたち2人には、このダンジョンの要であるDCのある部屋の番人と、私への武術の指導、そして、ダンジョン内の人型の魔物たちへの武術の指導を担当してもらうことになる。
空いた時間は、ひたすら自分たちの修行をするのに使ってもらってかまわない。ところで…」
僕は、挨拶を済ませると彼らのクラス部屋と武術の修行のための空間、僕への指導に必要なものなどの打ち合わせをし、ダンジョンに新たな部屋を追加した。
まずは、DCルームの手前に2人が最後の門番として立ちはだかり戦闘をするための部屋を作る。
2人の得意とする武器は、ハルバードなので、ハルバードを自由自在に振り回せるように天井を高くして、巨漢の2人が思う存分に動き回れるように部屋のサイズも他の部屋よりもふた回りほど大きめにした。次に、2人や僕、そして他の魔物たちが武術の訓練をするための訓練場を作った。これは、小学校の体育館ほどの広さの部屋を用意した。最後に、2人の寝室と食事などをするための部屋を用意した。
訓練場については、2人の方で、今後、いろいろと工夫などの提案をしてくるので、それに合わせて、より良い訓練ができるように改造をしていくということになった。
打ち合わせと部屋の作成作業の中で、ゴズール・メーズルから、食事のことについて尋ねられた。その時に、僕は自分を含めたこの迷宮に住む人型の魔物の食事の手配をどうにかしないといけないということに、思い至った。
今までのように、一人でパンをかじって済ませるというわけにはいかないのだ。魔王自ら料理をするのは様にならないので、料理係を確保し、台所も整備しないといけない。
まずは、ダンジョン商会で冷蔵室付き調理場セット一式を購入する。そうすると、dPadの説明の通り、ダンジョン商会から‘部屋設置アシスタント’がやって来た。ドワーフのギムスよりもさらに小柄、僕の腰くらいの背の高さで、手足もヒョロッとしているが、にこやかな笑顔で陽気な雰囲気を醸し出している男だ。
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僕の知識によれば、ブラウニーと呼ばれる種族のようだ…。ドワーフたちと同じ、亜人族のノームに近い家事に凝る種族で、貴族の屋敷などに執事として雇われることが多い。だから、ダンジョン商会でも‘部屋設置アシスタント’として働いているんだろう…。
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「どうも、魔王ガルドゥーニ様。ダンジョン商会部屋設置アシスタントのグリマーです。よろしくお願いします。
今回は、ダンジョン用の小規模調理場セットのお買い上げですね。調理場の場所は決まっていますか?場所が決まっていれば、そちらにご案内ください。コチラで調理場設置に適した形の部屋を作成し、設置させていただきますので。」
そういうグリマーを、調理場を作ろうと思っている場所に案内をすると、自分のdPadで何か操作をした後、僕に
「今、私のdPadで調理場を設置する部屋を作成するためのデータを作り、貴方のdPadに送りましたので、部屋の作成をお願いします」
と声をかけてきた。dPadを見てみると、たしかに部屋を作るためのアプリが起動して、いろいろと細かい設定をされた部屋を作るためのデータが開かれていた。言われた通りに、僕が部屋の作成をすると、グリマーは出来あがった部屋を確認した後で、自分のdPadを操作し、部屋に調理場セットを設置した。そして、僕に出来あがった調理場を一通り説明した後で、
「ご購入、ありがとうございました。それでは失礼いたします。」
と言って、スーッと消えていった。
お気に入り登録をしてくださっている方が、100人を超えました!
なかなか先に進まず、戦闘シーンが出てくるのは、いつのことになるのやら、といった感じですが、登録してくださった方々に楽しんでもらえるように、ちゃんと完結できるように頑張って書いて行きたいと思っています。
コンゴトモヨロシクお願いします。




