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2人は電車に揺られていた。
リューシャは先ほど食べたクレープの事をコーヤに美味しかったと力説中。
コーヤは機嫌が直った事を喜びつつ面白いヤツだなと思った。
まぁ、アニメ好きってのは置いといて・・・これからは退屈しないな。と言うのがコーヤの素直な感想であった。
揺られる事、数分でコーヤ達は電車を降りた。
改札機を出て駅から南、自分の家はココから8分ほど距離があるとリューシャに伝える。
「この辺の事をまた詳しく教えてね」
「また明日にでもな」
少し疲れたのかリューシャも言葉数が少なく、コーヤはリューシャを気遣い平時よりも遅めに歩く、結果8分と少しオーバーしたがコーヤ達はやっと自分の家に辿り着いた。
より正確に言うのであればこの飲食店が自体が家であり、2Fから上の階がコーヤ達の住む住居であった。
外観はそこそこ大きな店(家)でキャパは結構ありそうだ。
お店の看板にはカタカナで「ダモイ」、横に小さくロシア語で「домой」と書かれている。
意味はそのまま日本語に約すと「家」である。
コーヤ達は店の裏側の勝手口から店の中に入った。
「ただいま」
そう言って扉を開けるとそこには熊のような大男が後ろを向いてなにやら窮屈そうに作業をしていた。
大男は熊のような手で器用に小さな包丁を操っていたが、2人の姿を見るとすぐさま包丁を横に置いて布巾で手を拭きつつ、大きな声で喜んでリューシャを迎え入れた。
「よく来たね、リューシャ。久しぶり、元気にしてたかい?」
大男は大きな手でリューシャを抱きしめ子供をあやす様に頭を撫でた。
「アレクおじさんこそ元気にしてました?お父さんも会いたがっていますよ」
その光景を見ていたコーヤは完全に蚊帳の外であった。
が、悪い気はしなかった。
父親の態度が完全に親しい友人に対するそれであったからだ。
ふいに別の扉が「ガチャッ」と開いた。
扉を開けた主はコーヤの母親。
「リューシャ、いらっしゃい。今日からココがリューシャの家だからね」
「風香おばさんもお久しぶりです。元気でした?」
「今日からは私の事はお義母さんと呼びなさい。元気にしてたわよ」
風香かぁさんがリューシャを抱きしめた。
それを見ていたアレクも豪快に笑う。
「じゃぁ、俺はお義父さんか。昔から娘が欲しかったんだよ、俺」
大きな腕で2人をまるごと包み込む。
一部始終を見ていたコーヤは急に「ハッ」と自分の本来の仕事の事を思い出し、そっと隣の小さな部屋へと着替えに行ったのであった。