学校①
大きな学校の前までやって来た。
校門には私立・長田町南高等学校と書かれている。
「ココが春からリューシャが通う高校だよ」
「意外と小さな高校なんだねー」
リューシャは素直に感想を言う。
「ココの高校は運動場が少し離れた場所にあるんだ。だから敷地的にも小さく見えるんだと思う」
とコーヤは返答し、入り口にいた守衛さんに「訳」を話し学内に通してもらう事に。
リューシャは私服であったが別に守衛さんは何も言わずにすんなりと通してくれた。
すんなりと話が通った訳は事前にコーヤの父親がこちらの高校の学長を通し、見学の許可を取り付けていたからだ。
ココの学長とコーヤの父親とは面識があり、コーヤが以前に学外で暴力事件を起こした時にも少なからず便宜を図ってもらっていた。
そのカラクリの仕掛けとは・・・学長がコーヤの店のお客さんだからである。
それはリューシャの転入の際にも大きく関わっていたのだ。
学内に入った2人は辺りを見回す。
春休み中なので学内には部活動をしている生徒、または教職員しかいない。
校内はシーンと静まり返っていた。
コーヤは春休み中で上靴を持って来ていなかったので玄関で来客用のスリッパを2足持ち、それをリューシャに履かせてペタペタと廊下を歩きながら学長室に向かった。
そして、学長室の扉をコンコンと叩き「失礼します」と言っておじぎしながら中に入った。
続いてリューシャも「失礼します」と言って礼をしながらコーヤの後に続いた。
中にはあまり学長と言う風貌には見えないどこにでもいそうなお爺さんが待ち構えていた。
「田ノ中学長、今度ここに転入して来たリューシャ・ドストエフスカヤを連れて来ました」
とコーヤが目の前のお爺さんに向かってこう言った。
「君がドストエフスカヤ君かね。私がここの学長の田ノ中丸栄だ」
折りたたみ式のウチワをパンッと広げながらお爺さんは自分の事をそう名乗った。
リューシャはペコリと頭を下げ日本語で「はじめまして、田ノ中学長先生。この春からお世話になります。リューシャ・ドストエフスカヤです」と名乗った。
こうして10分ほどの滞在ではあったが無事に面談を終える2人であった。