ご近所探検
あくる朝、早めに起きたコーヤはリューシャを誘って外に出た。
コーヤは学校に入る必要があったので学生証を携帯し学生服を着込んでいた。
リューシャの方は制服がまだ届いていないので私服である。
最初に行くべき場所は決まっていたので、まずはそこを目指す。
その場所とは母方の祖父・祖母が住む小さな定食屋であった。
家から数分ほど歩いた場所にその店はあった。
外観はお世辞でも綺麗とは言えずむしろボロ屋と言った方が早い、なんとも古ぼけた建物である。
勝手知ったるコーヤはガラガラと戸を開けた。
「ジイちゃん、おはよう。紹介したい子を連れて来たんだけど」
と、コーヤは無人の店内で叫んだ。
すると、奥から頑固な職人風のお爺さんと柔らかな笑みを浮かべた優しそうなお婆さんが現れた。
リューシャはペコリと頭を下げ、「はじめまして。昨日からお世話になっているリューシャ・ドストエフスカヤと申します。宜しくお願いします」と2人に向けて日本語で挨拶した。
それを聞いた頑固そうなお爺さんはニコリと笑い、自分と妻の名前をリューシャに伝え挨拶を返した。
お爺さんがコーヤに問う。
「お前、朝飯は食って来たのか?」
するとコーヤは「その為に来たんだよ」と言って悪がしそうに笑った。
「ちょっと待っとれ。直ぐに作ってやる。そっちの子は嫌いな食べ物あるか?」
リューシャは無言で首を振り、お爺さんは冷たい厨房に火を灯した。
コーヤは「簡単な焼き魚とかでイイよ」とお爺さんに言う。
横に居たお婆さんはその様子を見守り「朝御飯の残りで良かったらそれも食べる?」とにこやかに微笑んだ。
一方その頃、家ではやっとコーヤの両親が起きたのであった。
軽く朝食をとるつもりであったが結局はあれも食べ、これも食べと祖父・祖母に進められ少し食べ過ぎてしまった。
コーヤ達は満腹の腹をさすりながらお爺さんらにお礼を言い、運動がてらに近所を探索する事にした。
(1時間後)
リューシャがコーヤに問う。
「お昼の仕込みを手伝いに戻らなくてイイの?」
「昼は簡易メニューだから今頃、親父が1人でやってると思うよ」
「へー」
「そろそろ、俺らが通う高校に行こうか」
と、コーヤは今日のメイン・イベントを切り出す。
リューシャは「うん」と答え、コーヤの後について行くのであった。