誰が誰の美貌に嫉妬したと?
「テレサ・ロサノ、俺は貴様との婚約を破棄する! お前は、このペルラの美貌に嫉妬し、取り巻きと共に虐めを繰り返したな! そのような醜悪な性根の女性を王妃にすることなどできない!!」
王家主催の夜会にてのアニバル・アベラルド王太子の宣言で、会場は静まり返った。
名指しされたテレサは、手にしていたワイングラスをテーブルに置くと、王太子に向き合う。
「アニバル王太子殿下。誰が誰の美貌に嫉妬したとおっしゃいましたか?」
「しらばっくれる気か? このペルラ・リベラだ」
婚約者であるテレサを差し置いて、エスコートまでしていた女性を周囲に見せるようにアニバルは押し出す。
確かに、子爵家という家格に見合わない、目を惹く美貌。金髪碧眼の、華奢でありながら、出るところは出ているスタイルの良さ。
10人いたら、9人はその美貌を認めるであろう、整った顔立ち。傾国と言われても頷けるほどの、艶やかさも備えている。
「なるほど。確かに、リベラ嬢は美しいですね。わたくしも彼女に敵う気がいたしません」
「では、罪を認めるのだな?」
「ですが、彼女の美貌に嫉妬して虐めをしたというのには、否定いたします」
「この期に及んで否定するとは、見苦しい。潔く認めたらどうだ」
「しかし、リベラ嬢より美しい者を知っている身としては、嫉妬などと言われましても」
「何だと? 負け惜しみか?」
「いいえ。……では証明いたしましょう。出でよ、我が妹、サリタ・ロサノよ!!」
「何ぃ?!」
パチンとテレサが指を鳴らすと、いつの間にか1人の女性が傍に来ていた。
「こ、これは…!!」
周囲がテレサの隣の女性を見て、一斉に息を呑む。王太子も例に漏れずだ。
色彩は金髪碧眼でリベラと同じだが、神々しいとも言える美貌の持ち主がそこにはいた。
「ふふふ…どうです? これがサリタの実力ですのよ!!」
勝ち誇って高笑いするテレサに、アニバルは悔しそうに顔を歪めるが。
「くっ…まだだ、まだ俺は負けていない! ぺルラの美貌に匹敵するかもしれないが、まだ負けたわけではない!!」
「ふっ…往生際が悪いですわよ、王太子殿下。隣の彼女がこのサリタより上だとでも?」
「いや、上とは言わないが、決して下ではない!」
「サリタは才色兼備ですのよ? リベラ嬢は容貌は美しいですが、その他はどうでしたでしょうね…?」
挑発するテレサに、ぐっと詰まるアニバル。
ぺルラも成績は悪くないが、良くもない。マナー面も下位貴族ということもあり、高位貴族であるロサノ家に敵うはずもなく。
「彼女は、…下位貴族として努力している」
「……そうですわね。失礼いたしました。教育の如何は俎上に載せるべきではありませんでしたわ」
「…俺も悪かった。ぺルラもサリタもどちらも美しいのだ。張り合うことではなかった」
「ええ、殿下。わたくしが、容貌云々で虐めなどすることはないとご理解いただけましたでしょうか?」
「──ああ。認めざるを得ないな」
「今回は、痛み分けですわね」
ガシッと握手を交わすテレサとアニバル。
それを見て、周囲の貴族たちは万雷の拍手を送る。
何だかよく分からんが、事は収まったようだと。
とはいえ、婚約破棄の件はうやむやにはならなかった。
実際にぺルラは虐めを受けていたが、まったくの別件。再度の調査でテレサの関与は認められず、冤罪であると発覚した。
アニバルは結局廃嫡になり、第二王子が王太子となることに。
テレサはそのまま、第二王子の婚約者にシフトすることになった。
了
安定の1時間クオリティ。アホな話ばかり浮かぶな…。




