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 訓練場は、水を打ったように静まり返った。

 ゴーレムの魔石が転がる音だけが、虚しく響く。


「……五秒……だと?」

 試験官のペンが床に落ちた。

 ザギは口を大きく開けたまま、何が起きたのか理解できず、持っていた大剣を落としそうになっていた。


「今、何をした……? 魔法も使わずに、土のゴーレムを粉砕しただと?」

「偶然だよ。核にヒビが入ってたんだろう」

 カイは無造作に剣を鞘に収め、何事もなかったかのようにリナの元へ歩み寄る。


「リナ、終わったぞ。……帰りに飯でも食っていこう」

「え、あ、はいっ……! カイさん、今の……かっこよすぎます!」


 リナが興奮してカイの腕に抱きつく。その様子を見ていたザギが、顔を真っ赤にして叫んだ。

「ふざけるな! あんなのインチキだ! おい、無色のゴミ! 俺と勝負しろ! 本当の実力を見せてやる!」


 ザギが逆上し、本気で火の魔力を解放する。

 彼の背後に、巨大な炎の剣が形作られる。それはギルド内では禁止されている全力の攻撃だった。


「死ねぇぇぇ!」


 猛然と突進するザギ。

 カイは溜め息をつき、振り返ることさえしなかった。

 ただ、左手で鞘を僅かに弾く。


 ——カツン。


 鞘の尻が、突っ込んできたザギの眉間に「置かれた」だけ。

 それだけで、ザギの全身の魔力が逆流し、彼は糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。


「……属性を制御しきれていない。もっと修行しろ」


 カイの背中は、もはやFランクの少年のものではなかった。

 その光景を、訓練場の天井裏から見つめる影があった。

 鋭い耳。野生の気配。木の属性を宿す獣人、フェリスである。


(……見つけた……)

 彼女の尻尾が、興奮で小さく震える。

(属性の匂いが全くしないのに、死ぬほど強い死神。……あの人の隣なら、私はもっと『上』に行けるかも)

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