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「カイさん……私、頑張ります。私の水魔法で、火のゴーレムを……」

 リナが震える手で杖を握る。だが、彼女の魔力は緊張で乱れていた。


「リナ、落ち着け。お前は後ろで支援サポートだけでいい」

「えっ、でも、一人じゃ属性の耐性を突破できません!」

「……属性なんて、ただの『不純物』だ。純粋な物理現象の前には、耐性なんて意味をなさない」


 カイが訓練場の中央に立つ。

 目の前には、最強の防御力を誇る「土のゴーレム」と、魔法を吸収する「火のゴーレム」が立ち塞がっていた。


「試験開始!」


 合図と同時に、ザギが叫ぶ。

「おい、やっちまえ!」


 その瞬間、『烈火の剣』の魔導士が、密かにカイの足元へ『泥沼マッド・バインド』の魔法を放った。試験の妨害——ギルドでは暗黙の了解とされる卑劣な工作だ。


 カイの足が泥に沈む。ゴーレムの巨大な岩の拳が、カイの頭上に迫る。

「死ねよ、ゴミが!」ザギが勝ち誇った声を上げた。


 だが。


「……遅いな」


 カイの姿が消えた。

 否、泥沼を「踏み抜いた」のだ。

 泥の粘性を無視するほどの脚力。爆音と共に訓練場の床が砕け、カイは一瞬で土のゴーレムの懐に潜り込んでいた。


(無色一刀流——『てん』)


 抜刀。

 それは斬撃ですらなかった。

 錆びた鉄剣の先が、ゴーレムの胸部——最も硬い『魔核』がある一点を突いた。


 ——パキンッ。


 乾いた音が響き、高さ三メートルの岩の塊が、まるでガラス細工のように粉々に砕け散った。属性耐性など関係ない。硬度を上回る圧倒的な衝撃密度が、分子の結合を直接破壊したのだ。


「なっ……!?」


 間髪入れず、カイは横に並んでいた火のゴーレムへと流れるように移動する。

 火のゴーレムが放つ高熱のブレス。リナが悲鳴を上げる。

 だが、カイは避けない。


 剣を横一文字に振るう。

 その剣圧によって生じた真空の刃が、炎そのものを「切り裂き」、背後のゴーレムの首を綺麗に跳ね飛ばした。


 試験開始から、わずか五秒。

 二体のゴーレムは、ただの瓦礫の山へと変わっていた。

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