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「次は……Fランクのカイ、リナ。前へ出ろ」
ギルドの地下訓練場。受付の男が不機嫌そうに声を張り上げる。
そこには、Dランクへの昇格を目指す数組のパーティーが集まっていた。通常、FからDへの飛び級は異例だが、下水ダンジョンのボス討伐(という名の「幸運」)が受理されたため、特例として試験が認められたのだ。
「ふん、無色のゴミと没落令嬢か。笑わせるぜ」
周囲から失笑が漏れる。特に鼻につく笑い声を上げたのは、Dランクへの昇格が確実視されているパーティー『烈火の剣』のリーダー、ザギだった。彼は火精ギルドの末端に籍を置く男で、燃え盛る大剣を肩に担いでいる。
「おい、受付の。そんなゴミ共と俺たちが同じ試験を受けるなんて、属性の神への冒涜だろ? こいつらがどれだけ無能か、俺が直接『教育』してやってもいいんだぜ?」
ザギがカイの目の前まで歩み寄り、火の魔力を込めた指先でカイの胸元を小突く。
「おい、空っぽ小僧。お前、あのボスを倒したってのは嘘なんだろ? リナの尻に隠れて、魔物が自滅するのを待ってただけじゃねぇのか?」
カイは無表情のまま、ザギの指先を見つめていた。
「……どいてくれ。試験が始まらない」
「あぁん? 生意気なんだよ!」
ザギが火を纏った拳を振り上げた瞬間、試験官が割って入った。
「やめろ、ザギ。……試験内容は『属性対抗戦』だ。ギルドが用意したゴーレムを、制限時間内にどれだけ迅速に破壊できるかを競う」
用意されたのは、四属性それぞれの耐性を持つ四体の魔導ゴーレム。
通常はパーティーで協力し、弱点属性を突くのが正攻法だ。
「よし、俺たちが先だ! 見てろよゴミ共、これが『選ばれた者』の戦いだ!」
ザギたちの攻撃は苛烈だった。火の属性を乗せた大剣が、木属性のゴーレムを一刀両断し、仲間の魔法が次々と標的を破壊していく。
記録は三分十五秒。Dランク昇格試験としては最高クラスのタイムだった。
「ひゃはは! 見たかよ! 次はお前らの番だ。……おい、リナ。泣きべそかいて逃げるなら今のうちだぜ?」




