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「ま、待って! 待ってください!」
ギルドを出て数分。夕暮れの路地裏で、カイは背後から呼び止められた。
振り返ると、そこには息を切らした少女が立っていた。
スカイブルーの髪、使い込まれたが手入れの行き届いた杖。そして、その瞳には先程のギルドの連中が浮かべていた侮蔑の色は一切なかった。
「……何の用だ。俺は見ての通り無色だぞ」
「私はリナ! 水の魔導士です。……あの、さっきの、見ました。みんなは気づいてなかったけど、あなた、あの火球を……『斬り』ましたよね?」
カイは眉を動かさずに応じる。
「手で払ったと言ったはずだ」
「嘘です! 私は没落したとはいえ魔導士の家系です。魔法が霧散したんじゃない、物理的に分断されたあんな現象、見たことがありません!」
リナは一歩踏み出し、真剣な眼差しでカイを見つめた。
「私とパーティーを組んでくれませんか? 私、魔力の出力が高すぎて、普通の戦士の人だと合わせられないんです。でも、あなたなら……」
「断る。俺は一人でいい」
「報酬は……七対三でいいです! 私が三でいいですから!」
カイは足を止めた。
今の彼には、今晩の宿代も、まともな食事代もない。師匠の遺言を守るためには、まずは生き延びなければならない。
「……六対四だ。俺が六。それと、俺の戦い方について他言しないこと。それが条件だ」
「……! はいっ、喜んで!」
こうして、最強を隠す無色の剣士と、行き場を失った水の魔導士の奇妙な二人が誕生した。




