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工房の奥、灼熱の熱気が渦巻く中で、カイは上半身を脱ぎ捨て、黒い塊——『深淵鉄』の前に立っていた。
「……始めろ。時間は三日だ」
伝説の鍛冶師ムラマサが、冷たく言い放つ。
カイは静かに拳を握りしめた。
剣がない。だが、師匠の言葉が脳裏をよぎる。
『カイ、剣とは腕の延長ではない。お前の体そのものが、理を断つ一振りの刃となれ』
——ドォォォォン!!
一発目の拳が深淵鉄に叩きつけられた。
工房全体が揺れるほどの衝撃。だが、漆黒の金属は傷一つ付かず、逆にカイの拳から血が噴き出す。
魔力を一切受け付けないその鉄は、物理的な「純粋な力」だけを求めていた。
「無色一刀流……剛の型」
カイは痛みを無視し、二発、三発と拳を叩き込んでいく。
一打ごとに骨が軋み、筋肉が悲鳴を上げる。だが、カイの瞳に迷いはなかった。彼は鉄を叩いているのではない。自分自身の甘さを、属性に頼らぬ己の限界を、力任せに削り出していた。




