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「……うるせぇな。仕事中だ、失せろ」
扉の奥から響いたのは、地響きのような野太い声だった。
中に入ると、そこは熱気が渦巻く異界だった。
溢れんばかりの溶薬の熱。だが、不思議とそこには魔法の気配が一切ない。
奥で巨大な槌を振るっていたのは、上半身裸の、傷だらけの老人だった。
「……その構え、その目。……お前、あの飲んだくれ(師匠)の弟子か」
老人は槌を止め、カイを鋭く睨みつけた。
「師匠を知っているのか」
「知っているも何も、あいつが最後に持っていた錆びた鉄剣を打ったのは、この俺だ」
老人は鼻を鳴らし、カイの空っぽの腰元を見た。
「折れたか。……だろうな。あんな玩具、お前の速度に耐えられるはずがねぇ。……だが小僧、俺に打たせたいなら、条件がある」
老人は、工房の隅に転がっていた、黒く重い「塊」を指差した。
それは魔力を一切通さず、どんな魔法でも傷一つつかないと言われる、世界の不純物を集めたゴミ——『深淵鉄』。
「そのクズ鉄を、お前の拳で『平ら』にしてみせろ。魔法も属性も使わず、ただの筋力と気合でだ。……それができなきゃ、お前に握らせる剣は、この世にねぇ」




