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封鎖を強行突破し、三人は『天を衝く回廊』の第十階層、広大な円形ホールへと辿り着いた。
そこには、待ち構えていたイグニスと、彼に付き従う火精ギルドの精鋭たちが陣を敷いていた。
「来たか、無色のゴミ。……ここで死ぬのは、お前たちの属性なき人生における、唯一の光栄だと思え」
イグニスが愛剣『紅蓮の牙』を抜く。
瞬間、ホール全体の酸素が焼き尽くされ、致死レベルの熱波が三人を襲う。
「『大炎界』!」
リナが必死に水の障壁を張るが、イグニスの圧倒的な火力の前では、蒸発して霧散していくのは時間の問題だった。
「カイさん、熱が……! 魔法が、防ぎきれません!」
「……下がってろ。ここからは、俺の仕事だ」
カイが一歩前へ出る。
その手には、いつも通りの錆びた鉄剣。
「……ははは! そのナマクラで、私の太陽を斬るつもりか?」
イグニスが嘲笑と共に、巨大な炎の龍を解き放つ。
カイは剣を構えない。
ただ、右手を柄にかけ、腰を落とした。
師匠との修行。一日一万回の素振り。属性という色に頼らず、ただ「速さ」と「正確さ」だけを追求した、研ぎ澄まされたエゴ。
(無色一刀流——『空』)
抜刀。
それはもはや、光の瞬きですらなかった。
熱波によって揺らぐ空間そのものを、カイの剣が「冷却」する。
極限の速度で振られた刃が空気を圧縮し、断熱膨張による絶対零度の衝撃波を生み出したのだ。
——パキィィィィィィンッ!!
炎の龍が、物理的に「凍りついて」砕け散った。
「な……魔法を、凍らせた……? 属性もない、ただの剣で……!?」
イグニスの顔から余裕が消え、戦慄が走る。




