19
「……何よ、これ。どういうこと?」
翌朝、ギルドの掲示板前でフェリスが低く唸った。
迷宮都市ゼムの稼ぎ頭である巨大ダンジョン『天を衝く回廊』。その入り口が、真紅の重装歩兵たちによって完全に封鎖されていた。
「本日より、本迷宮は四聖ギルド『プロメテウスの焔』の管理下に置かれる。許可なき者の立ち入りは、反逆罪とみなす!」
拡声魔法による非情な宣言に、周囲の冒険者たちは騒然としていた。
「ふざけるな! 俺たちの食い扶持はどうなるんだ!」
「中にはまだ、戻ってきてないパーティーもいるんだぞ!」
抗議する冒険者の足元に、一本の炎の矢が突き刺さる。
「黙れ、ノイズ共。これは『聖座』の決定だ」
赤いマントを翻し、特務官イグニスが悠然と姿を現した。彼の視線は、群衆の中にいるカイを正確に射抜いている。
「カイ……そしてその取り巻き共。中に行きたければ、我らの『試験』を突破してみせろ。……もっとも、中に残された者たちが、いつまで無事でいられるかは保証しかねるがな」
「……卑怯ですよ! 中の人たちを人質にするなんて!」
リナが杖を握りしめ、顔を真っ赤にして叫ぶ。
カイは無言のまま、封鎖線を見つめていた。
いつも通りの無表情。だが、その周囲の空気だけが、真空に曝されたかのように薄く、鋭く変質していく。
「……リナ、フェリス。準備はいいか」
「リーダー、本気で行くのね?」
「当然だ。……俺たちの『家計』を邪魔する奴は、誰であれ斬る」
カイの言葉は冗談のようだったが、その瞳には凍てつくような殺気が宿っていた。




