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宴もたけなわ、酒場の喧騒が心地よい子守唄のように響く中、リナが少しだけ真剣なトーンで話し始めた。
「……私、実は怖かったんです。没落して、家を追い出されて。水の属性はあっても、使い道がなくて、ギルドで馬鹿にされて。……でも、今日、カイさんに『お前がいたから楽ができた』って言ってもらえて……」
リナの瞳に、微かな涙が浮かぶ。
「初めて、この『色』を持っていて良かったって思えました。カイさんの無色を、私の青で支えられるなら……私、もっと強くなりたいです」
「私もそうよ」
フェリスが、いつもより優しく尻尾をリナの肩に回した。
「私は獣人で、属性も中途半端。ずっと一人で、誰も信じられなかった。でも、あんたは私を『道具』じゃなく『仲間』として使った。……リーダー、あんたが世界を塗り替えるっていうなら、私はその特等席で見届けてあげる」
カイは二人の言葉を、黙って受け止めた。
師匠は言った。力を隠せ、一匹狼でいろ、と。
だが、師匠。
あなたの教えを破って、俺の横には今、二つの「色」がある。
「……飲みすぎだ、二人とも。明日は朝から装備のメンテナンスに行くぞ。特にリナ、杖の魔晶石にヒビが入ってた。買い替えだ」
「えっ、あれ高いのに! いいんですか!?」
「リーダー、私の短弓も新調していい!?」
「……予算の範囲内ならな」
「やったぁぁぁ!」
二人の歓声が、夜の酒場に響き渡る。
カイの口元に、本人も気づかないほど僅かな、本当に僅かな微笑が浮かんだ。




