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その老人は、最期までただの「飲んだくれの隠者」を演じ通した。
「カイ……いいか。お前の剣は、この世界の『色』には染まらん。それは神が与え忘れた空白であり、この世で唯一の、混じりけのない純粋な理だ」
痩せ細った師匠の手が、カイの少年らしい柔らかな手の上に重ねられる。
「力を誇示するな。属性という名の『色』に溺れた者たちは、透明な真実に気づかぬまま自滅する。……だが、もしお前が『守りたい』と願う理不尽に出会ったなら、その時は——世界をその色ごと、真っ二つに断ち割ってこい」
それが遺言だった。
土の属性さえ持たない、作物を育てることすら許されない不毛の開拓村。カイは師匠の墓を村外れに作り、錆びた一本の鉄剣を背負って歩き出した。
向かうは、辺境の迷宮都市『ゼム』。
そこが、少年の成り上がりの、そして「神の理」を壊す旅の起点となる。




