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護衛騎士のやぺぇ趣味

 昼食後、満腹になった俺たちは、それぞれ好き勝手に時間を潰していた。


 ジークはというと、部屋の隅で黙々と素振りをしている。


 「……殿下の護衛として、いつ何があっても動けるように」


 と言っていたが、単にやることがないからだろう。


 そんなジークを横目に、俺とアレンはベッドの上で、真剣な議論をしていた。


 「殿下は胸派なんですか? 尻派なんですか?」


 アレンが真顔で聞いてきた。


 「いや、そりゃ……胸だろ!! 胸は夢と希望の象徴だぞ!!」

 「僕は尻派ですね。あれは芸術です。丸みの完成形です」

 「いやいやいや!! 胸は正面から幸せをくれるんだよ!? 尻は後ろからじゃねぇか!!」

 「後ろ姿の破壊力を侮ってはいけませんよ、殿下。尻は“振り返らせる力”があります」

 「名言みたいに言うな!! 胸には“正面突破の力”があるんだよ!!」

 「尻には“包容力”があります」

 「胸には“柔らかさ”がある!!」

 「尻にもあります」


 「ぐっ……!」


 アレンが強い……!


 ジークは素振りをしながら、小声で「……どちらも尊いと思いますが」と呟いた。


 (お前も参戦するな!!)


 一方ノエルは、机に向かって政務の書類を片付けていた。


 「兄上の代わりにやってあげてるだけですからね! 別に嬉しくなんて……っ」


 と言いながら、明らかに口元が緩んでいる。


 そんな平和な空気をぶち壊すように、ノックもなく扉が開いた。


 「ルカ、具合はどうだ?」

 「顔を見に来たわよ、ルカ」


 国王と王妃が揃って見舞いに来た。

 俺達は、反射的にさっきまでの行動を隠した。


 アレンは胸お尻論争のメモを布団の下に突っ込み、ジークは素振りの途中で刀を背中に隠し、ノエルは書類を抱えたまま、立ち上がった。


 (いやお前ら、バレバレだろ!!)


 俺は布団にくるまり、弱々しい声を作った。


 「……だいじょうぶ……です……」


 王妃が眉を寄せる。


 「まあ……声が少し高いわね。喉が痛むの?」


 (いや元から高いんだよ!!)


 心の中で全力ツッコミを入れつつ、俺はか細く頷いた。

 国王は腕を組み、うんうんと頷く。


 「よく寝ておくのだぞ。寝れば治る」


 王妃も優しく微笑む。


 「そうよ、寝ていれば治るわ。無理しないでね」


 そう言って、二人はあっさり部屋を出て行った。


 ………。


 ………………。


 「いや、軽ッ!!」


 俺は布団を跳ね上げて叫んだ。


 「この国、王子が“重度の風邪”って言ってんのに、寝とけで終わり!? もっとこう……医者呼ぶとか、薬持ってくるとか、あるだろ!!」


 ノエルが小声で呟く。


 「兄上、普段から健康すぎて、逆に心配され慣れてないんですよ……」


 (いやそれにしたって雑すぎるだろ……!!)


 怒りとも呆れともつかない感情を抱えつつ、俺は結局布団のなかに潜り込んだ。


 「……寝るしかねぇのか……暇すぎる……」


 ぼそっと呟いた瞬間。


 「殿下、寝顔見てていいですか?」


 アレンがベッドの横に正座していた。


 「やめろぉぉぉ!! なんでお前はそういう方向に全力なんだよ!!」

 「だって、殿下の寝顔……可愛いから……」

 「言い方が完全にストーカーなんだよ!!」


 ジークがため息をつく。


 「アレン、殿下が落ち着かないだろう。離れろ」

 「はーい」


 アレンは素直に下がったが、目だけはキラキラしていた。

 怖い。


 そんなこんなで、俺は強制的に寝ることになった。



※※※



 翌朝。


 「……暇だ」


 昨日より元気になった(元から元気だが)俺は、ベッドの上でゴロゴロ転がっていた。


 「風邪設定って、マジで何もできねぇじゃん……」


 そこへアレンがにこにこしながら近づいてきた。


 「殿下、暇なら……王宮を探検してみません?」

 「いや、俺いま“重度の風邪”設定なんだが?」

 「だから変装するんですよ」


 アレンはなぜか胸を張った。


 「僕、メイド服持ってます」

 「なんで持ってんだよ!!」

 「趣味です」


 即答。

 ジークが眉をひそめる。


 「アレン……お前の趣味は本当に理解できん」

 「ジーク先輩も着てみます?」

 「断る」


 アレンは残念そうに肩を落としたが、すぐに俺へ向き直った。


 「殿下なら絶対似合いますよ。ほら、これ」


 どこからともなく取り出されたメイド服。

 黒と白のフリルが可愛い、完全にガチのやつだ。


 「……いや、俺、王子だぞ?」

 「今は女の子ですよね?」

 「ぐっ……!」


 言い返せない。

 悔しいが、事実だ。


 アレンはさらに追撃してくる。


 「変装のために、これもどうぞ」


 黒縁メガネを差し出してきた。


 「……なんでそんなに準備いいんだよ」

 「趣味です」


 また即答。

 こいつ、絶対やべぇ趣味持ってる。


 だが――


 メイド服を着て、黒縁メガネをかけた俺を鏡で見た瞬間。


 「…………え、俺……可愛くね?」


 鏡の中には、金髪をふわっとまとめた、清楚系メイドがいた。

 目元はメガネで隠れているが、それが逆に儚げな雰囲気を出している。

 肌は白くて、女体化したせいか頬もほんのり赤い。


 「……これは……アリだな……」

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