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松戸愚連隊  作者: ponzi
28/43

第28話打ち上げライブ

2025年10月。ライブツアーを大成功に終えた豪志とシャンボは、久しぶりに松戸駅前のクラブ「ベーカー」に顔を出した。この店は、彼らが音楽活動を始めた場所であり、彼らにとって特別な意味を持つ場所だった。

支配人の村上さんは、いつになくうやうやしい態度で、豪志とシャンボを出迎えた。彼の顔は、心からの喜びと感動に満ちていた。

「お疲れ様、gokiくんたち。アナクロニズムツアー2025、YouTubeで見たよ!もう松戸の町は、アナクロニズムの話題で持ちきりだよ。わたしも感動した!」

村上さんは、そう言って彼らの肩を叩いた。彼の言葉は、彼らの音楽が、ライブハウスの地下室を飛び出し、多くの人々の心に届いたことを物語っていた。

「ありがとうございます、村上さん。今日はツアーの打ち上げにきたんですけど、せっかくだから『ベーカー』のステージを借りて、少し演奏しますか」

豪志は、そう言って微笑んだ。

「おお、いいねえ。なんの曲を歌ってくれるんだい?」

「今日はわたしとシャンボさんだけで、楽器もアコースティックギターしか持ってきてないんですが。何やろうか?シャンボさん」

「ツアーであまり演奏できなかった曲」

シャンボがそう言うと、豪志は頷いた。

「おお、そうじゃの。じゃあ、ええと。『新自由主義』『恋するということ』『last love』をあまりやってなかったかな」

「オーケー」

シャンボさんが、ステージに上がってアコースティックギターとマイクをセットする。豪志も、アコースティックギターを抱え、壇上に上がった。

照明が落とされ、静寂に包まれた「ベーカー」のステージに、豪志の柔らかなギターの音が響いた。

「では聴いてください。村上さんのために。『新自由主義』」

豪志がそう言うと、シャンボが、語りかけるように歌い始めた。

『新自由主義』

(歌:アナクロニズム)

実力も運のうち、人生は不公平か

お金で買えるもの、買えないもの

わたしは統失、意外な性質

われわれはいかにして共生できるか

愛情、友情、いのち、人間としての尊厳までも

よこしまなインセンティブ

人生への経済学的アプローチ

テロの先物市場

他人の生命

哲学を真似るのも、才能は偶然かな

生きとし生けるもの、愛すること

海洋放出、いつもの達筆

見上げればキリがない、他者との比較

愛情、友情、いのち、人間としての尊厳までも

よこしまなインセンティブ

人生への経済学的アプローチ

愛の商品市場

自分の生命

曲が終わると、村上さんは、真剣な眼差しでステージを見つめ、静かに拍手を送った。彼の拍手は、彼らの音楽が持つ、単なるエンターテイメントを超えた、深いメッセージへの共感を物語っていた。

「続いて、『恋するということ』」

豪志の言葉に、村上さんの表情がさらに真剣になる。

『恋するということ』

(歌:アナクロニズム)

大人のようで、子供のようで

臆病者の2人が出会ったのさ

多様性が叫ばれる中で、違う生きづらさが生まれてきてる

それが分断と対立の時代のひとつの原因となっている

みんな不平等ではなく、不公平に怒っているのです

出会ったのは必然で

恋に落ちたのも必然で

繋がったのも必然で

恋のすべては神の導き

この曲は、豪志とエミの出会いを歌っている。観客として、この曲を聴いていたエミは、豪志の純粋な想いが詰まった歌に、心が震えるのを感じていた。

生きてるようで、死んでるようで

精神病の2人が出会ったのさ

多様性が叫ばれる中で、違う生きづらさが生まれてきてる

それが分断と対立の時代のひとつの原因となっている

みんな不平等ではなく、不公平に怒っているのです

出会ったのは偶然で

恋に落ちたのも偶然で

繋がったのも偶然で

恋のすべては神の導き

出会ったのは奇跡で

恋に落ちたのも奇跡で

繋がったのも奇跡で

恋のすべては神の導き

出会ったのは必然で

恋に落ちたのも必然で

繋がったのも必然で

恋のすべては神の導き

曲が終わると、村上さんの拍手は止まらなかった。彼は、豪志の過去の苦悩と、そこから生まれた希望を歌ったこの曲に、深い感銘を受けていた。

「すみません(笑)。このあたりはあまり人気がない楽曲なので、こういう場を借りてしかなかなか演奏できないのですけど」

豪志は、少し照れくさそうに笑った。

「最後の曲です。『last love』」

豪志が、最後の曲名を告げると、村上さんは、さらに真剣な表情になった。

『last love』

(歌:アナクロニズム)

you are my inevitable person

my life may depend on you

but, wanna be independent person

(あなたはわたしにとって不可欠な人間

わたしの人生はあなた次第かもしれない

でも自立した人間でありたい)

this dilemma, your dogma

I believe in,

not right because win, but win because right

necessity of history, inevitability of philosophy

(このジレンマ、あなたのドグマ

わたしは信じてる、

勝った者が正しいのではなく正しい者が勝つのだと

歴史の蓋然性、哲学の不可避性)

you are my last girl

this is my last love

you are my last man

this is my last love

(あなたはわたしの最後の女性

これが最後の恋

あなたはわたしの最後の男性

これが最後の恋)

この曲は、豪志の恋愛に対する、哲学的な思想を歌っている。愛する人への依存と、自立したいという願望の間の葛藤が、繊細なメロディで表現されていた。

you are my inheritable person

I may make demands on you

but, wanna be interesting person

(あなたはわたしのすべてを受け継ぐ人間

あなたに大きな負担をかけるかもしれない

でも、面白い存在でありたい)

this karma, your magma

I believe in,

not good because win, but win because good

necessity of history, inevitability of philosophy

(このカルマ、あなたのマグマ

わたしは信じてる、

勝った者が善良なのではなく善良な者が勝つのだと

歴史の蓋然性、哲学の不可避性)

you are my true girl

this is my true love

you are my true man

this is my true love

(あなたはわたしの真実の女性

これは真実の恋

あなたはわたしの真実の男性

これは真実の恋)

曲は、終盤に向けて、さらに感情的な高まりを見せる。

this dilemma, your dogma

I believe in,

not right because win, but win because right

necessity of history, inevitability of philosophy

(このジレンマ、あなたのドグマ

わたしは信じてる、

勝った者が正しいのではなく正しい者が勝つのだと

歴史の蓋然性、哲学の不可避性)

you are my last girl

this is my last love

you are my last man

this is my last love

(あなたはわたしの最後の女性

これが最後の恋

あなたはわたしの最後の男性

これが最後の恋)

演奏が終わると、村上さんは、感極まって泣き出した。彼の目には、豪志の人生のすべてが、この音楽に凝縮されているように見えた。

「いやあ、よかったよ。お二人さん。音楽には不思議なチカラがあるよね」

村上さんは、そう言って豪志とシャンボに近づき、彼らを強く抱きしめた。

「本当ですね(笑)。あの村上さんが泣いてくださるとは」

豪志は、村上さんの温かい言葉に、心が温かくなるのを感じた。

彼は、改めて音楽の持つ不思議なチカラ、人間の魂を揺さぶる言葉を超えたパワーを実感していた。彼らの音楽は、彼ら自身を救い、そして、村上さんのような、多くの人々の心を揺さぶった。

しかし、この温かい夜の裏側で、彼らの成功を面白く思わない影が、静かに動いていた。テリーは、豪志の音楽を「偽善」と断じ、彼らの「愚連隊」としての正義を、徹底的に叩き潰そうと、最後の計画を着々と進めていたのだ。


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