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松戸愚連隊  作者: ponzi
26/43

第26話2025年9月、群馬県伊勢崎市「ギブミーラブ」

2025年9月。まだまだ残暑が厳しい灼熱の群馬県伊勢崎市。大型ショッピングモール「スマーク」に隣接するライブハウス「ギブミーラブ」の前に、豪志とシャンボ、そしてこの日のために駆けつけた湯澤さんと秀夫さんは立っていた。彼らの目の前には、開演を待ちわびる観客たちの長蛇の列ができていた。

「アナクロニズム」ライブツアー2025も、いよいよ後半戦に突入する。市川市、新小岩での成功がSNSで拡散され、彼らの人気は群馬県にまで届いていた。

ライブハウスの入り口で、店長の高橋さんが笑顔で彼らを出迎えた。

「わんばんこ、ponziちゃん、シャンボさん。湯澤さん、秀夫さん!」

高橋店長は、豪志の親友、星野さんの知人だ。

「アナクロニズムのチケットは、とっくの昔にソールドアウトで。入場券を手に入れられなかったお客さんが、伊勢崎市中のカフェやバーで、YouTubeやTikTokのライブ配信をパブリックビューイングしていますよ!」

高橋店長の言葉に、豪志たちは驚きを隠せない。彼らの音楽が、ライブハウスの枠を超え、街全体を巻き込むほどの熱狂を生み出していることに、彼らは感動を覚えた。

「ありがとうございます、高橋店長。今日はわれわれも全力で頑張ります」

豪志は、心から感謝の気持ちを込めてそう答えた。

「開演は18時。それまでにご飯とトイレを済ませておいてください、皆さん」

高橋店長は、そう言って彼らをステージへと促した。

開演時間。満員の観客たちの熱気で、会場はサウナのようだった。ステージの幕が上がり、豪志、シャンボ、そして湯澤さんと秀夫さんが姿を現すと、会場は割れんばかりの歓声に包まれた。

「こんばんは、伊勢崎市!」

豪志のMCが始まると、歓声はさらに大きくなった。伊勢崎市は、豪志にとって特別な場所だ。かつて彼が、精神科病院で苦しんだ場所。しかし、今は、彼が音楽で、人々を熱狂させる場所となった。

「今夜のために、新曲も用意してきました。聴いてください、『Enough!』」

豪志がギターを鳴らし始めると、会場は静まり返った。それは、これまでの彼らの曲の中でも、最も鋭く、そして哲学的な、社会に対する怒りを込めた曲だった。

『Enough!』

(歌:アナクロニズム)

Enough of this fascism politics!

(この全体主義政治はもうたくさんだ!)

Enough of Trump and Musk!

(トランプとマスクにもたくさんだ!)

Enough of division and conflict!

(分断と対立にもたくさんだ!)

Stop the World War Ⅲ!

(第三次世界大戦をとめろ!)

The real of the Christian illusion!

(キリスト教徒の幻想の現実!)

Enough of tyranny and heavy taxes!

(圧政と重税にはもうたくさんだ!)

Enough of over Liberalization!

(行きすぎたリベラル化にもたくさんだ!)

In love with the most your lover!

(あなたの最愛の人を愛せ!)

unbelievable words will make you believe the music

(言葉が何も信じられなくなったとき、君は音楽を信じるだろう)

unbelievable deeds will make you believe selfish deed

(行動が信じられなくなったとき、君は利己的な行動を信じるだろう)

豪志の歌詞は、世界の政治や社会問題にまで踏み込んでいた。その歌詞に、観客たちは心を揺さぶられた。

a believable politics will make you relieve the dogma

(信用できる政治は、君を呪縛から解き放つ)

a believable man will make you relieve the tension

(信用できる人間は、君の不安を和らげてくれる)

don't philosophize the things!

(物事を難しくするなって!)

who deserves what?

(誰が何に値するか?)

god resides in details

(神は細部に宿る)

Zen Buddhism and Japan philosophy

(日本仏教と日本哲学)

ここから、曲調はさらに激しさを増していく。

don't philosophize the things!

(物事を難しくするなって!)

faith without belief

(信心なき信仰)

Marx's concept of man

(人間のマルクス的概念)

Western civilization and dogma of Christ

(西洋文明とキリストの呪縛)

You are not my President!

(あなたは私の大統領ではない!)

Save the world from fascism!

(世界をファシズムから救え!)

Enough of neoliberalism!

(新自由主義にもたくさんだ!)

Stop the World War Ⅲ!

(第三次世界大戦をとめろ!)

演奏が終わると、会場は、割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。観客たちは、彼らの音楽が持つ、単なるエンターテインメントを超えた、深いメッセージに心を揺さぶられたのだ。

「ポンジー!」「シャンボー!」

余韻が覚めやらぬうちに、豪志が再びマイクを握った。

「続いても、新曲です。『ノアの方舟』です」

会場は、再び静まり返った。豪志がギターを鳴らし始めると、今度は、先ほどとは違う、どこか優しく、そして希望に満ちたメロディーが会場に響き渡った。

『ノアの方舟』

(歌:アナクロニズム)

いつも決まった仕事、いつも決まった日常

いつも決まった帰り道

古典は読む方、色褪せたルーティンを慰めてくれる数少ない魔法だから

君と出会って、距離を縮めて

本当は狙ってたんだ、このネタ

君がいるから頑張れるんだって

君がいるから生きていけるんだって

君がいるからすべて許せるんだって

君がいるから信じられるんだって

神話のようにノアの方舟に乗って

like a history、ノアの方舟に乗って

君の人生に光と神のご加護が!

君の未来に勇気と幸運を願う!

この曲は、豪志がエミに捧げた曲だ。彼女との出会いが、彼の人生にどのような変化をもたらしたのか、そのすべてが歌詞に込められていた。

いつも決まったメンツ、いつも決まった表情

いつも決まった人生

映画は観る方、色褪せたルーティンを慰めてくれる数少ない魔法だから

君と出会って、距離を縮めて

本当は狙ってたんだ、この恋

君のおかげで頑張れるんだって

君のおかげで生きていけるんだって

君のおかげですべて許せるんだって

君のおかげで信じられるんだって

観客たちは、豪志の恋愛に対する、純粋で、しかし不器用な想いに、心を動かされていた。

神話のようにノアの方舟に乗って

like a history、ノアの方舟に乗って

君の人生に光と神のご加護が!

君の未来に勇気と幸運を願う!

哲学書が好きなんだ

君との差異を埋めて、同一的になりたい

ノマドのデタッチメントさ

2人のおとぎ話

君のためだから頑張れるんだって

君のためだから生きていけるんだって

君のためだからすべて許せるんだって

君のためだから信じられるんだって

演奏は、終盤に向けて、さらに感動的な高まりを見せる。

君がいるから頑張れるんだって

君がいるから生きていけるんだって

君がいるからすべて許せるんだって

君がいるから信じられるんだって

神話のようにノアの方舟に乗って

like a history、ノアの方舟に乗って

君の人生に光と神のご加護が!

君の未来に勇気と幸運を願う!

演奏が終わると、会場は再び、割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。観客たちは、彼らの音楽が持つ、深いメッセージと、豪志が乗り越えてきた人生の物語に、心を揺さぶられたのだ。

「ありがとう!伊勢崎市の皆さん!」

豪志をはじめ、「アナクロニズム」のメンバーは、深々と頭を下げた。

彼らのライブツアーは、成功を収め続けていた。しかし、その成功は、彼らの存在を、松戸の街の闇に潜む、ある男に、さらに深く刻みつけることになった。テリーは、豪志たちのライブの様子を、スマートフォンの画面越しに見ていた。

「…ノアの方舟?ふざけるな。お前は、誰を『方舟』に乗せるつもりだ?俺は、お前と一緒に地獄に落ちるんだ!」

テリーの心の中にある、豪志への深い憎悪は、伊勢崎でのライブの成功で、さらに燃え上がった。彼の計画は、最終章の舞台、松戸のライブハウス「ギフテッド」で、ついに実行されることになるだろう。

彼らの音楽の旅路は、栄光のクライマックスへ向かうと同時に、最大の危機へと向かおうとしていた。


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