表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
松戸愚連隊  作者: ponzi
24/43

第24話2025年8月、東京都江戸川区新小岩「ペニーレーン」

2025年8月。真夏の日差しがアスファルトを焦がす中、東京都江戸川区新小岩のライブハウス「ペニーレーン」は、異様な熱気に包まれていた。定員150人の小さな会場の入り口には、前日からダフ屋が出るほどの長蛇の列ができていた。市川でのライブが大成功を収め、その噂がSNSで拡散された結果、彼らの人気は東京の東部地域にまで飛び火していたのだ。

カズさんとトミーさんが待っていてくれるこのライブハウスは、豪志たちにとって、特別な場所だった。開演時間が迫り、超満員になった会場は、観客たちの期待と興奮で、息苦しいほどの熱気に満ちていた。

ステージに立った豪志とシャンボは、目の前に広がる光景に、驚きを隠せない。

「こんばんは、江戸川区新小岩!」

シャンボがマイクを握り、力強く叫んだ。歓声が、まるで津波のように押し寄せた。

「小岩地区には、特別な思い入れがあります。今日も、新曲を持ってきました」

豪志がギターを鳴らし始める。そのメロディは、これまでのロックサウンドとは違い、どこか懐かしく、そして哲学的な響きを持っていた。シャンボの歌声が、会場全体に響き渡った。

『恋は小岩』

(歌:アナクロニズム)

恋はいつも突然やってくるもの

正常と異常の脱構築

小岩いいとこ、今宵は濃いわ

狂気の隔離も始まった

恋は故意だわ、憩いは小岩

センター小岩、ここ良いわ

今日では、心の問題、あるいは意識の持ち方に訴えかけてもしょうがないので、ただもう即物的にコントロールするしかないのだという傾向がより強まっていると言えると思う。つまり、生政治の部分が強くなってきている。

あるいは、心の問題に関しても、昔だったら、もっと話を聞くことが重視されていたところ、それでは時間もかかるし薬で解決すればいい、ということになっていく。

人はものを管理するとスッキリして安心します。しかし、あまり机を片づけすぎない方がいいというアーティストの話。机の上がある程度適当な方がクリエイティブになれるというわけでした。

似たことが社会についても言えるのではないでしょうか。片づけをするとスッキリする。では、いわば「社会の片づけ」をしてもよいものでしょうか?ここで倫理が問われているのです。

観客たちは、その難解な歌詞に、耳を傾けながらも、豪志のギターとシャンボの歌声が作り出す独特な世界観に、次第に引き込まれていく。それは、彼らの音楽が持つ、単なるエンターテインメントを超えた、哲学的な魅力だった。

恋はいつも小岩から始まり

近現代社会においては、

規律訓練と生政治が両輪で動いている

小岩的ディシプリン、恋はパノプティコン

センター小岩、ここ良いわ

「心から脳へ」という最近の精神医学の転換も、大きく言えば、生政治の強まりだととることができます。

ちょっと変わっている、なんか個性的だ

フーコーはかつてない深さで人間の多様性を論じた

われわれは二項対立で「これは正常」、「これは異常」と割り振ったり、あるいはさまざまに分類して秩序づけようとしたりします。

人はものを管理するとスッキリして安心します。しかし、あまり机を片づけすぎない方がいいというアーティストの話。机の上がある程度適当な方がクリエイティブになれるというわけでした。

似たことが社会についても言えるのではないでしょうか。片づけをするとスッキリする。では、いわば「社会の片づけ」をしてもよいものでしょうか?ここで倫理が問われているのです。

演奏が終わると、会場は一瞬の静寂に包まれた後、万雷の拍手と歓声に包まれた。豪志は、その熱狂的な反応に、心が震えるのを感じた。

「…続いても、小岩のためにつくった新曲です」

豪志は、興奮を抑えきれない様子でマイクを握り直した。

「これは、シャンボさんしか歌えない。『Love Will Bloom』」

豪志がギターを鳴らし始めると、シャンボは深く息を吸い込み、魂を込めて歌い始めた。

『Love Will Bloom』

(歌:アナクロニズム)

love will bloom, love will bloom

(恋は花開く)

We like this bloom

(このつぼみが好きだ)

love will groove, love will groove

(愛はグルーブ)

We make this groove

(このグルーブを形成する)

love is belief, love is belief

(愛は信じること)

We seek the belief

(この信仰を追いかけて)

love needs proof, love needs proof

(愛は証明を必要とする)

We hope this proof

(この証明を願う)

I'll be always your friend

(僕はいつだって君の味方だよ)

You must be all my living

(君は僕のすべてさ)

left sider, right sider

(左の人、右の人)

we must recognize each "differences" deconstructively!

(われわれはお互いの「差異」を脱構築的に認め合わなければならない!)

diversity, inclusion

(多様性、包摂)

we must recognize each "differences" deconstructively!

(われわれはお互いの「差異」を脱構築的に認め合わなければならない!)

Here is center koiwa

(ここはセンターこいわ)

Here is center of world

(世界の中心)

center forever

(センターは永遠に)

center of Eva

(神のご加護がセンターに)

シャンボの歌声は、力強く、そして優しく、観客一人ひとりの心に深く響いた。それは、豪志とシャンボが、このバンドを通して伝えたいメッセージそのものだった。

love will bloom, love will bloom

(恋は花開く)

We like this bloom

(このつぼみが好きだ)

love will groove, love will groove

(愛はグルーブ)

We make this groove

(このグルーブを形成する)

love may plume, love may plume

(愛は尊いかもしれない)

We respect your plume

(あなたの高貴をリスペクトします)

love may cream, love may cream

(愛は混ざり合うかもしれない)

We like this cream

(そういうのも好き)

I'll be always your friend

(僕はいつだって君の味方だよ)

You must be all my living

(君は僕のすべてさ)

left sider, right sider

(左の人、右の人)

we must recognize each "differences" deconstructively!

(われわれはお互いの「差異」を脱構築的に認め合わなければならない!)

diversity, inclusion

(多様性、包摂)

we must recognize each "differences" deconstructively!

(われわれはお互いの「差異」を脱構築的に認め合わなければならない!)

Here is center koiwa

(ここはセンターこいわ)

Here is center of world

(世界の中心)

center forever

(センターは永遠に)

center of Eva

(神のご加護がセンターに)

演奏が終わると、会場はもはや、熱狂の渦と化していた。観客たちは、彼らの名前を叫び、アンコールを求めた。

「ポンジー!」「シャンボー!」

「アンコール、アンコール!」

聴衆の黄色い歓声は、いつまでも鳴りやまない。豪志とシャンボは、ただ呆然と立ち尽くしていた。彼らの音楽は、確実に人々の心に届き、熱狂を生み出していた。

しかし、その夜のライブの熱気は、ある人物の心をさらに燃え上がらせていた。

政治結社『日本愛国連合』の幹部、テリー。彼は、豪志たちのライブの様子を、スマートフォンの画面越しに見ていた。そして、豪志が口にした「小岩」という言葉、そして「脱構築」という哲学的な概念に、怒りを露わにしていた。

「……小岩?ふざけるな。お前は、あの場所で、俺の人生を脱構築しただろうが!」

テリーの心の中に、九年前の、豪志とテリーの間に起こった、決して語られることのない、忌まわしい過去が蘇る。

そして、テリーは、豪志がかつて通っていた、小岩地区の精神科クリニック、「小岩クリニック」の院長に電話をかけた。

「……もしもし、テリーです。例の件、お願いできますでしょうか?」

テリーの冷たい声は、彼らのライブツアーに、大きな嵐をもたらそうとしていた。彼らの「愚連隊」としての正義は、今、最大の危機を迎えることになるだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ