魔法会9
すると吹き抜けのような天井から光が射す、教室3つ分くらいはある部屋が現れた。
こちらに向いている本棚は、半円に並んでいる。
その本棚は3段の棚段になっているようで、ここから見ると、本棚の上に一回り小さくなった本棚が上に乗っているようにも見えた。
書庫ってくらいだから、もっと小さな部屋を想像していたけど……
思ったより広いし、入り口が地下だとは思えないほど明るく、とても綺麗だ。
「突っ立ってないで入れよ」
とドンと背を押されてハッとする。
「あ……うん」
ヤバい、今更なんか緊張して来た。
部屋に足を踏み入れていくと、ふと自分の手や足に色とりどりの光が落ちている事に気付いて立ち止まった。
光の元を辿るように見上げると、天井にある大きな大きなステンドグラスに当たった。
天井の半分くらいはステンドグラスになっていて、そこから射し入る陽の光は言葉に出来ないほどに綺麗で、思わずため息が漏れてしまう。
「う……わぁ……」
こんなの、初めて見た。
「綺麗……」
「ん?そうか?あんなの、色のついたガラスを繋ぎ合わせてるだけだろ」
あぁ、こいつにはこの綺麗さが分からないんだ。
「なんだよ、その哀れみの目は。殺すぞ」
「すみませんね」
「お前……」
……って、しまった!こうしちゃいられない!
2時間半くらいしか時間がないのに!
その事を思い出して、すぐに木目の床を駆けて本棚に向かう。
すると、本棚の横にジャンル名が分かりやすく分類されているのが目に入った。
よかった。これなら早く見つかるはず、と思ったけれど――
結局1段目も2段目も私が探しているようなジャンルは無く、なんと残るは3段目だけになった。
もし3段目にもなかったら、どうしよう、と不安が広がっていく。
眉をひそめていると、背後から声を掛けられる。
「おい、さっきから何も読まずに何してんだ」
探す事に真剣だった私は、驚き小さく飛び跳ねる。
「わっ!ビッ、ビックリした!」
「お前ビックリしすぎだろ」
ドドドと音を立てる胸に手を当てる私に、ディオンは続ける。
「読みてぇもの、見つかんねぇのか?」
「うん」
「ここにどんな本があるのか想像していたのか分かんねぇけど、生徒が楽しめるような本なんて置いてない。もう戻るぞ」
そう言って私の手を引こうとする。
「えっ、違う!私はただ、探している本がどこにあるのか分からないだけで……」
「は?お前、本見つけんのにどんなだけ時間かかってんだよ」
「え?……そんな経ってる?」
「ああ、もう30分は経ってんぞ」
返した親指で差された壁にある時計の針を見て、声にならない悲鳴が出る。
「ど……どうしよう……」
近いジャンルの本は中まで目を通していたからだ。
「しゃーねぇ。探すの手伝ってやるから、どんなのを探してるか言え」
「え!?あっ……。そ、それは……」




