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【大賞受賞作】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?~あなたがくれた幸せの呪い~  作者: 花澄そう


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魔法会8

 

「え?そうなの?」

「ああ。さっき降りて来た階段も、この扉も、ここにあるって知ってる奴しか出せない。なのに、お前が来た時は階段や扉が出たまんまになってたんだろ?」

「うん」

「だから警備員がサボり過ぎだって言ったんだよ」


 なるほど。そういう事だったんだ。

 あんなに簡単に見つかった階段を、翌日いくら探しても見つけられなかったのは、私が方向音痴だからじゃなかったんだ。

 警備員の隠し忘れだったんだね。



 そういえば、ディオンが扉や階段を出す瞬間を完全に見落としていた。

 なんだか記憶が飛び飛びだから、頭が半分寝ているのかもしれない。


「扉とかって、どうやって出すの?」

「ん?こうするだけだ」

 と言いながらディオンは軽くこぶしを作って手の甲でコンっとドアを叩いた。

 すると上から順に、ジワリと壁と同じ色味や素材に変わっていく。


「壁に変わった!凄い!」

 もう、どっからどう見ても完全な壁に驚きが隠せない。


「凄いか?こんな単純な魔法が」

 ゴミ屑でも見るような目で見降ろされて、小さなイラ立ちが湧き上がる。


「こんなの、ドアを壁に見せかけるだけの簡単な魔法だ」

 もう1回コンと叩いて今度は下から現れるドアに、やっぱりまた驚いてしまう。


「一応、念のため俺から1つだけ忠告しとく」

「なに?」



「多分、これからもこの扉の位置は変わらない。だからお前も今後は俺無しで、階段もこの扉も出現させる事()()()出来るだろう」


 やっぱり!?

 だから聞いたのよ!


「でも、命が惜しいのなら俺無しで勝手に入ろうとしない方がいい」

「え?なんで?」


「このドアには複雑で高度なセキュリティが張り巡らされている」

 それは予想通りよ。でも頑張ったら解けるんじゃないの?

 なんたって、私は魔力の覚醒者なんだし。


「もしこのセキュリティを、完全に切らずに入ったら……」

「たら?」


「怪我は免れないだろうな」

「……え?」

「下手すると死ぬかもしんねぇ」

「……っ!?」

 その言葉に、一瞬で声を奪われた。



「そ、それって……どんな感じなの?回避方法はないの?」

「詳しくは知らねぇよ。そんな感じの仕掛けを感じるから言ったまでだ。まぁ、調べれそうではあるけど面倒くせぇ」

「そこ、めちゃくちゃ重要じゃない!?」

「別に、お前が勝手に一人で入らなければいいだけだろ」


「うっ……」

 確かにそうなんだけど……


 ディオンが居なくても自分で勝手に入れるようになりたかったのに……

 後で恩を売られたくないし。


 でも命あっての復讐だ。

 残念だけど、そんなヤバそうなセキュリティがかけられているのなら、もう一人で入る事は諦めよう。



 もしあの時、ドアノブをひねっていたらどうなっていたんだろう?

 そんな事を想像すると、血が引いて行くような感じた。



 ディオンは、さっきからずっとドアに魔法を掛けている。

 きっとその凄いセキュリティとやらを外してくれているんだろう。


 高度な魔法を瞬時に出すディオンが、時間をかけないと解除できないセキュリティ……

 確かに、私一人でこのセキュリティを完全に解除するのは無理っぽいかも。


 そんな高度なセキュリティをかけられている部屋に、ディオンは私を入れてくれる。バレたら絶対ヤバいはずなのに。



 理由は――脅されたからじゃない。



「開いた。入るぞ」


 本当に分からない人だ。


「う……うん」


 やっぱり、いつか今日の事も含めて恩を返せって言われるんだろう。そうに決まってる。



 ディオンがドアノブに手をかけ、グッと回すとギッという音が鳴ってドアが開いた。

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