魔法会7
それが胸の膨らみに近いと気付いた瞬間、ドキッとして反射的に身を引いてしまう。
ディオンは何も無かったかのように「早く行くぞ」と言い残し、講師室のある建物に入って行った。
ディオンのあの無反応感……
私の胸って、そんなに小さいんだろうか……
と、自分の胸元を見つめてショックを受ける。
それにしても、魔力の覚醒をした私に暴かれるような秘密なんて、もう何もないよね?ディオンは何を暴きたいの?
まさかまだスパイだとか思ってる?
モヤモヤしながら小走りでディオンを追いかける。
建物の中に入って斜め後ろをついて歩いた時に気づいた。
さっきまでと違って、ディオンが私の歩幅に合わせて歩いていることに。
でも、ディオンのことだから、たまたまなんだろう。
「着いたぞ」
そう言われてディオンの視線の先を見る。
そこには数年前に私が発見して以来、一切姿を見せなくなっていた『魔書資料室』と書かれたドアがあった。
「んん……んっ??」
思っていたのと違う声が出た。
直後、自分の口にまだテープが貼られていた事を思い出す。
貼られた感覚がほぼ無いせいでスッカリ忘れていたようだ。
もう剥がしていいのかな?
そう思いながら端から剥がそうとしてみるけど、魔法で出来たものだからか全く剥がれそうにない。
ディオンの目の前に移動して自分の口を何度か指を差す。
「んんっ!!」
「んだよ。言いたい事あるなら言葉で言え」と言われてイラっとする。
それが出来ないから、こうやって剥がしてアピールをしてるんでしょ!!
ディオンは必死な私を見て、くくっと馬鹿にするように笑う。
魔法を解いてくれる様子はなくて、小さな不安が湧き上がった時、ディオンはとんでもない事を口にした。
「お前煩ぇし、一生そのままの方でいいんじゃねぇか?」
ちょ、ちょっと待ってよ!
嘘でしょ!?冗談でしょ!?ねぇ!
「んん!んん、ん――!!」
一生このままなんて嫌っ!!
ディオンの腕を掴んで、涙目でフルフルと頭を振って魔法を解いてと訴える。
「ククッ、何言ってんのか分かんねぇんだけど?」
こんな事になってるのは、あんたのせいでしょうが!!
「まぁ今日は時間がねぇし?この辺にしといてやるか」
え!?時間あったら私はどうなってたの!?
心の中で悲鳴をあげる私にディオンは指を向けて来る。
そして次の瞬間、口にへばりついていたような感覚がスッキリサッパリ消えた。
「あっ……喋れる?」
お試し気分で喉に手を当てて声を出す。
「当たり前だろ」
そう言われて内心ムッとし、盛大な文句を言ってやりたくなった。
けど、目の前のドアに今は聞かずにはいられない。
「ディオン」
「ん」
「実は私、昔ここに来た事があるんだけど」
「は?」
「その時は警備員に見つかって、何もできずに慌てて逃げたんだけど、次に来た時はここに来る階段すら見つからなかったの。なのになんであるの?」
「警備員サボり過ぎだろ。何やってんだ」
と言うディオンに首を傾げる。
「え?どういう事?」
「説明すんのめんどくせぇ」
「えー、教えてよ。気になる!」
と言っても教えてくれなさそうなディオンに、グッと腕を掴んで引っ張ると「離せ!服が伸びるだろ」と怒られる。
「だ、だって……教えてくれないから」
口を尖らせると深い溜め息が落とされる。
「はー。本来、この地下には簡単に出入り出来ねぇようになってんだよ」




