魔法会6
「いや、そうじゃないけど……」
否定すると、目をいっそう細めて忌々《いまいま》しそうに私を見下ろした。
「ふぅん」
「でも、アランはあんな見た目だけど凄く良い人よ」
「へぇ、そうか」
ふいっとそっぽ向いたディオンは、少し間を開けてからポツリと呟いた。
「お前、男を見る目がねぇな」
「へ?」
「……気が変わった」
そう言うと、ディオンは突然踵を返していた。
「もう魔書資料室に入れてやらねぇ」
グランド側に足を向けるディオンに「えっ」と驚きの声を上げてしまう。
う、嘘……っ!!
困るっ!!
「な、なんでよ!」
ディオンの後を追いかける。
「言っただろ。気が変わったからだ」
なっ!!
「約束位守りなさいよ!サイコパス講師!!」
そう叫ぶと、今度は突然ピタリと立ち止まった。
「うぷっ!」
突然立ち止まったものだから、ディオンの大きな背中にぶつかってしまう私の顔面。
「ちょっと、急に立ち止まらな……」
鼻を押さえると、いつの間にか振り返っていたディオンが私の顔を覗き込んだ。
「えっ……何?」
サイコパスは、さすがに言いすぎた?
私の顔にそっと手を伸ばしてくるディオンに、心臓が微かに早くなるのを感じた。
……その時、長く綺麗な指が私の唇を上下にプレスした。
「んん!?」
「この口は悪い口だな」
目を見開き驚いている私の目の前に、突然テープのようなものが現れたと思うと、なんとそのテープは私の口を容赦なく塞いできた。
「んんっ!?」
なんて事するの!?と怒りが湧き上がった時、ディオンは意味不明の条件を突き付けて来た。
「あの臭ぇ野郎に二度と近付かねぇって約束するんだったら、今回だけ特別に入れてやるけど……どうする?」
えっ……それ、無理じゃない?同じクラスなのに。
でも、断ったら本当に一生入れて貰えない気がする。
ディオンは本当にそういう事する。
「約束するんだったら頷け」
すぐ目の前に私の人生の希望の星がある。
なのに、直前にこんな条件出してくるなんて――酷い。
そんな条件、無理だと分かっていても、その場しのぎの嘘を付くか無いじゃん!
そう思って、自分の手のひらをグッと握ってからコクンと小さく頷いた。
負い目を感じて俯くと、下げた顎をグイっと掴み上げられる。
強制的に見上げさせられた私の瞳に、吸い込まれそうな程に綺麗な顔がめいいっぱいに映る。
「今の、嘘じゃねぇだろうな?」
一瞬戸惑った私は、再び小さく頷いた。
聞いてくれるか分からないけど、私に近付かないようにアランにお願いしてみよう。
それが無理なら、せめてディオンの来る日だけでも……
「まぁいい。嘘だったら……」
そう言うとディオンの大きな手は、私の顎から首筋、そして鎖骨へとゆっくりと伝うように降りていき、心臓のあたりをトンっと指先で押した。
「今度こそ泣きわめいても、お前を暴いてやる」
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