転校生12
真剣な目で言われて、冗談で返すこともできず、返事に迷ってしまう。
すると、アランの手が私の手に伸びてきた。
次の瞬間――
「おい、何教室で盛ってんだよ」という、とてつもなく低い声が私の頭上から落ちて来た。
直後、目と鼻の先にあったアランの顔が一瞬で小さくなり、アランを乗せた椅子が、窓と窓の間にある壁にガンッ!とぶつかる。
その様子はまるで、私の背後から突風でも吹いて、吹っ飛ばされたようだった。
驚いて振り返ると、そこにはさっきまで待ちわびていたはずのディオンが立っていた。
でも、その目を見た瞬間に分かった。
今のディオンは危険だ、と。
その危険さは、私の首に手をかけた時以上かもしれないと思った。
「うっ……なんなんや……」
椅子を壁際に残したままユラりと立ち上がったアランは、なぜか手首を押さている。
ぶつかった時に痛めたのだろうか。
「痛った~」
アランはディオンを見るなり目を丸くする。
「まさか……特別講師?……か?」
「だったらどうだ?」
ディオンが首を傾げながら目を細め、私たちの間にすっと入り込む。
「へぇ……。講師やのに、えらい酷い挨拶やな。それが特別講師流か?」
アランの挑発的な言葉にギョッとしてしまう。
周りを見渡すと、他のクラスメイトたちは自習を続けたまま、ディオンの存在に気付いていないようだった。
「今度は無視なんかいな。めっちゃKYやな!」
その言葉に、ぎゃーー!!と、心の中で悲鳴を上げる。
アラン!!ディオンは普通の講師とは違うのよ!
そう心の中で忠告するけど、もちろんアランには届かない。
「は?KYだ?」
ディオンが冷たく問い返すと、教室内の温度が一気に下がるように感じた。
「ホンマにタイミング考えてや。俺、さっき全力で告白してたんやけど」
「アランっ……!」
必死に小声で名前を呼んで首を振るが、アランは「なんや?」と不思議そうな顔を向けてくる。
そんな中、ディオンの周りにどす黒い空気が漂って来た。
「うわぁ!な、なんやこれ!?」
すすの様な黒い空気に驚き、私とアランは宙を見上げた。
ディオンがアランに手をかざした瞬間、私は慌ててその腕を掴んだ。
「ま、待って!」
ディオンは一瞬驚いた顔を見せたけど、すぐに私を冷たく見下ろした。
「離せ」
「無理!だって、今離したらアランが……!」
「どうなってもいいだろ」
「良くない!アランは私の大事なクラスメイトなの!」
「クラスメイトだ?くだらねぇ」
ディオンはそう言い放つと私を払いのけた。
勢い余って床に倒れ込むと、ディオンが吐き捨てるように言う。
「色気づいてこんな場所で気色の悪い事を言ってる奴が、大事なクラスメイトだ?笑わせんな」
「……そ、それは……」
確かに、教室で口説くなんて、褒められたことではない。
でも、だからってこんなことをするなんて、やっぱり間違ってる!
ディオンの手が再びアランに向けられる。
「やめて!」
辺りに渦巻いていた黒い靄が、ディオンの指先に集中していく。
その様子にゾッとして体が固まった。
「ディ……ディオン!お願い!」
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