転校生11
ひぃ、と心の中で悲鳴が出る。
「も、もう自習するから、喋りかけないで!」
「えー?」
教科書のページをめくろうとすると、私の手の上にアランの手が乗った。
目をパチクリさせた私に、どうでもいい質問を飛ばしてくるアラン。
「なぁ、シエルちゃんって付き合ってる奴とかいるん?」
ディオンーー!早く来て!
会議なんて抜け出していいから!今すぐ!
ああ、今ばかりはディオンが恋しい!!
「い、いないよ」
そして、押しに弱い自分が嫌になる。
「じゃあ元カレとかは?」
「いない……」
「へー。一人もおらんの?意外」
告白された事は何度かはあるけど……
それも、きっとからかわれただけだろうし。
「……そう?」
「そんな可愛いんやから彼氏の一人や二人くらいいそうやん」
またこの人は……
無視してノートに向き合うと、アランが覗き込むように話をする。
「なぁ、シエルちゃん。また嘘やと思ってるやろ?」
思ってますとも。
「めっちゃ可愛いのにすぐ照れるウブな所も、頼まれると断れない所も……しっかりしてそうで意外とドジな所も、全部本気で可愛いって思ってんねんけど」
その言葉に、思わず頬が熱くなるのを感じた。
「好きな奴とかいんの?」
「い……いない……、って、もう自習するから」
「ふぅん……。じゃあ、気になる奴は?」
「気になる……人……?」
その言葉に一瞬で、ポンと浮かび上がってきたのは――ディオンの顔。
ぎゃーーー!
なんで!?どうしてここでディオンが!!
慌てて頭に浮かんだその顔を必死にかき消す。
「い、い、いないよ!」
「んん?なんや、今メッチャ怪しいんやけど?」
見透かすような目で覗き込まれてギクりとする。
なぜか早くなってしまった心臓に、今度は大きく目を逸らしてしまう。
「まぁ、でも気になる程度やもんな。そんな奴なんて、綺麗サッパリと消してやるわ」
突然、伸びて来た手が私の顎をすくうと、アランの方に向き直される。
「……っ!」
目の前に自信に満ち溢れているような顔が見えて、思わずドキッとしてしまう。
「シエルちゃんの頭の中、すぐに俺でい~~ぱいにしてやる」
そんな台詞を甘い声で囁かれて、体温が上がった気がした。
「……は、離して。ほんと適当な事ばっかり言って……」
そう言って顎にある手を掴んで離す。
「適当ちゃうんやけど。何回言ったら分かってくれるん?ってかハッキリ言わな分からん感じ?」
「ハッキリって……?」
「俺が、めちゃくちゃシエルちゃんに惚れてるって事や」
「……えっ!?」
絶対嘘って思うのに……、真剣な目にそれ以上は否定できなくて、心臓が早鐘を打ち始めた。
「あの廊下でシエルちゃんとぶつかった時から……ずっと気になってた」
長く黒いまつ毛をゆっくりと動かして、照れたように目を伏せるアラン。
「今度はいつ会えるんやろうかって思ってたら……すぐに会えた」
伏せた目が持ち上がり、目が合うとアランはとっても嬉しそうに笑う。
「まさか、ほぼ10歳未満しか居ないって聞かされていたクラスにおるとは思わんかった。しかも前の席なんて……」
「わ、悪かったわね!16歳なのにFクラスで!」
「ちゃうちゃう。そういう話しちゃう」
そう言って私の頭にポンっと手を置いた。
「俺がシエルちゃんに、めちゃくちゃ運命を感じたって話や」
そう言いながら、歯を見せてニコッと笑うアランに、思わず動揺する。
運命……?
「俺……こんな本気になったん初めてやねん。まだ出会ったばっかやけど、本気でシエルちゃんが好きや。俺と付き合ってほしい」
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