転校生5
昨日の人が転校生!?
彼は堂々とした様子で教卓まで行くと、ざっと教室を見回した。
すぐにバチっと目が合う。
すると、彼は一瞬驚いた顔を見せてから白い歯を出し、ウインクを投げて来た。
その事に唖然とすると、彼の自己紹介が始まった。
「昨日、魔力に目覚めてOSAKAから来たばかりの、ジョウガサキ・アラン19歳です。このクラスでは俺が最年長になるって聞いたんやけど、みんな年齢に関係なく仲良くしてやってや。ヨロシクやで」
気さくな挨拶に教室中に拍手が響く。
昨日、魔力に目覚めたって……、まさか、それって……
「皆さんがお察しの通り、ジョウガサキさんは魔力の覚醒をした方です。なので魔力は既に学園内でもトップクラスですが、魔法の使い方やコントロール力は今から学んでいく事となります。ジョウガサキさんが困っていたら、皆さん力になってあげてください。
で、ジョウガサキさんの席は……」
軽く握った手を顎の下に当て、悩まし気に教室を見回す講師とバチっと目が合う。
「あー。タチバナさんの前がちょうど開いてるわね」
え!?
心の中の自分が止めてと叫ぶ。
「タチバナさん立って下さい」
「……はい……」
渋々席を立つと講師に指を差される。
「あの子がタチバナさん。あなたと同じ魔力の覚醒者で、一番年が近いわ」
彼にそう説明した後、そのまま私に質問を飛ばしてくる。
「あなた、確か16歳だったわよね?」
「……はい。そうです」
恥ずかしながら16歳でFクラスです。しかも来月で17歳。
ジョウガサキ・アランは私の方に向かって歩いてくる。
なんで私の前なの?
この人、苦手な感じがするのよね。見た目だって超派手だし。
良い人そうではあるけど、距離感が完全におかったし。
私の前で立ち止まったジョウガサキ・アランは「よろしく」と言ってくる。
見ると、昨日より少し控えめになったピアスが、耳元や口元で光っていた。
「よろしく……」
昼休みの学食――
物凄い人だかり。
あの中心には、あの転校生のジョウガサキ・アランがいるらしい。まるで世界的有名人が来日したかのようだ。
派手で、オラオラっぽく見えるのに、意外と気さくであの顔。
そして今いる全生徒の中で唯一外の世界を知ってる人。
外はどんな世界なのかとか、どういう生活をしているのかとかを根掘り葉掘り聞かれているらしい。
そら皆興味あるわよね。
「転校生、本当に凄い人気だね」
向かい側に座るメイが言うと、隣に座っているIQ130のFクラスの委員長、ルイーゼがしっとりとした声で言う。
「シエルちゃんに続いて連続で覚醒なんて、最近は奇跡続きね」
「でも、なんで彼はFクラスからなの?」
私の質問に、ルイーゼは微かに片眉を上げた。
「シエルちゃんは、本当に自分の興味ある事以外は全く覚えてないよね。まぁいつものことだけど」
ため息まじりに図星を言われて、頭をかいて苦笑いを返す。
「Gクラスで習ったでしょ?10歳以上で魔力の覚醒が起きてこの学園に入学する人はIクラス以上からスタートすることもあるって」
「そんなの習ったっけ?」
「習ったわよ。一応試験もあるわ。だから必ずFクラスから始まるわけじゃないの。IクラスからFクラスまで、その人に一番合っているクラスに振り分けられるのよ」
「でも、なんかズルくない?」




