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【大賞受賞作】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?~あなたがくれた幸せの呪い~  作者: 花澄そう


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転校生3


今すぐにでも追いかけたいのに、あまりの衝撃に体が硬直してしまい、動けない。

私は、なんとか奮い立たすようにしてベンチから立ち上がった。


「シエル!?……あーあ、クレープ落ちたよ?もったいない。どうしたの?突然……」

そんなメイの声が、とても遠くに聞こえた。


動かない足を無理やり動かすようにして、ひざに力を込める。

ようやく足を一歩踏み出した時、「先帰る!」とだけ言い残し、今にも消えそうなその後ろ姿を追いかけた。



「え!?ちょっと……」


…………


……



黒髪の人物が入った講師室棟に足を踏み入れると、途端に焦りが込み上げてきた。

なぜなら、さっきの姿がどこにも見当たらないからだ。



いない!?そんなっ!


分かれ道なんて無かったし、すぐに追いかけたはずなのに!


廊下を急ぎ足で進むと、奥の曲がり角から足音が聞こえてきた。



もしかして……っ!


ここで逃したら迷宮入りする!

そう思い、全力で角を目掛けて駆け出した。



すると――


「わっ!」


思いきり何かにぶつかってしまい、体勢を崩しかける。

「危ない!」と低い声がして、腰を支えられた感触が走った。


その感触に、思わず閉じてしまった目を開けると、ピントが合わないくらいの距離に真っ黒なシャツが映った。



そのまま恐る恐る視線を上げると、肩にかかる長さの、部分的に金色が混じった髪が目に入る。

さらに耳にはいくつものピアス、唇の端にも小さな輪っかが輝いていた。


そんな派手な身なりを目にしてから、もう少し視線を上げていくと――

ローレンと引けを取らない程に超絶イケメンが映った。


この人は、さっきの人物とよく似た服装をしている。

けど、特徴からして全く違う人物なのは明らかだった。


その時、腰にじわりと温もりを感じて自分の脇腹に目を向ける。

すると、そこにはゴツゴツしたドクロの指輪がいくつも付いた手が腰に添えられていて、目玉が飛び出しそうになった。


「ひゃっ!」

驚きの声を上げながら、慌てて離れる。


「大丈夫?怪我ない?」

「あ……だ、大丈夫です。ぶつかってしまって、ごめんなさい」

私はぺこっと頭を下げる。


「よかった。でも廊下は走ったらアカンやろ。危ないやん」

そんなニコニコとした笑顔で返された言葉に、私の目は点になった。



それは、こちらの世界に来てから一度も聞いた事がなかった独特なイントネーションだったからだ。


「どうしたん?」

と言いながら綺麗な顔で覗き込まれて、一瞬ドキっとする。


すると目の前の人が、ゴツイ指輪や腕輪が何個も付いている手を伸ばしてくる。そしてムスクのような香りが私の鼻を突く。


少し目が回りそうなのは、その綺麗な顔が近いせいか、その強い香りのせいか……


そっと髪に触れられて、つい目を見開いてしまう。



「鼻、赤なってるやん」

そう言われて初めて、思い出したかのように鼻先からおでこにかけて痛みが湧き上がって来た。



学園の人とは思えないほど超ド派手で、独特な話し方をする人。


目尻がキュっと吊り上がっているのにパッチリとした目で、美しい顔立ちなのに、どこか猫のような可愛さも感じさせる人。


上級クラス棟のイケメン話はだいたいメイから聞かされるけど、こんな特徴を持つ人の話は一度も聞いたことがない。


「こ、これくらい大丈夫です」

そう言うと、なぜか彼は私の口元をじっと見つめてきた。


不思議に思っていると、「待って」とささやきながら、突然私の唇に触れてきた。



唇をぬぐわれたような感覚の後に指が離れると、彼の指先には白い泡と茶色いソースが付いていた。


「なんか付いてたで」

「あっ……」

と反射的に声を出した瞬間、彼はそれをペロリと舐めて言った。


「甘っ……クリームか?」

その一連の流れを見て、自分の口にさっきのクレープのクリームとチョコレートが付いていたんだと気づいた。

でも、なぜ見知らぬこの人がそれを平然と口にしたのか理解できず、驚きのあまり口が開いたまま塞がらない。


目をやると、この人の黒シャツにもクリームが付いていてギョッとしてしまう。


「あっ!どうしよう、クリームが……」

慌ててポケットからティッシュを取り出し、謝りながら拭こうとすると、

「こんなん別にええし。それより、名前なんて言うん?」

と、まるで逃がさないかのように片腕を肩に回された。


これが所謂いわゆるナンパというやつなんだろうか。



「えっ……?私は……」


その瞬間、私はハッとた。


……って!!こんな事をしている場合じゃなーーい!

なんで私は悠長にこんなことをしていたの!?

と、脳内の私は頭を抱えて叫んだ。


「すみません!私急いでて……今、ここに長い黒髪で背の高い人通りませんでしたか?」

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