転校生1
「今日の地震、怖くなかった?」
「あれは地震じゃなくて、カミヅキ様がやっていた魔力解放の授業らしいよ」
「え!?そうなの!?結構何回も揺れたのに?地響きもしてなかった?」
「なんか、隠れてる潜在魔力を引き出す授業だったらしくて、その時に生徒が魔力暴走しかけたんだって。それをカミヅキ様が1人で全部抑え込んだらしいよ。揺れは、その時のみたい」
「……ふーん、そうなんだ。でも、魔力の暴走を抑えるって、普通は数人がかりじゃないと無理なんじゃなかったっけ?」
「普通はそうよ。でもカミヅキ様は1人でやっちゃったらしいよ。しかも数人の暴走を全部だよ。やっぱり国が認める『特別講師』ってだけあるよね~」
あぁ、それで何度も揺れてたんだ。
「凄いよね」
魔力だけは。
「だよね」
「お待たせしました~」
そんな会話をしている私達の間を割るように差し出されたのは、ふんわりとバターの香りが漂うクレープ。
店員さんから私が受け取るなり、メイは「あっちで食べよ」と渡り廊下近くの木陰のベンチを指さした。
「うん」
腰を下ろすと、久しぶりのクレープを一口頬張る。
生クリームの甘さがじゅわっと口の中に広がり、思わず目を細めた。
「美味しっ」
「ねぇシエル」
「ん?」
もぐもぐと口を動かしながらメイに視線を送ると、なぜか一つの見落としさえも許さないといった雰囲気で顔を近付けられていて驚いた。
「な、何!?」
あまりの近さに少し身を引くと、メイはそれ以上に距離を詰めてくる。
「正直に答えて!」
「えっ?な、何を?」
「シエルとサオトメ様って、今どうなってんの?」
「……え?」
「本当はず~~~~っと聞きたかったけど、こういう話は絶対二人っきりの時の方がいいでしょ!?でも、なかなかタイミングがなくて聞けなかったのよ!やっとよ!やっと聞ける!」
メイはクレープを持っていない方の手で握りこぶしを作る。
「あー……確かに、いつも誰かと一緒だったもんね」
「そうなのよ!で、この前のデートで進展とかあった?告白とか!」
「こ、告白!?って……そんなのあるわけないでしょ!」
「えぇー!?無いの!?」
「メイ……前から何度も言ってるけど、私とローレンはただの友人で……」
「言っとくけど、そう思ってるのは絶対にシエルだけだよ!」
メイは私にビシッと指を差して当然かのような目を向けてくる。
なんでメイはこんなに私とローレンをくっつけたがるんだろう。
「シエルってサオトメ様の事どう思ってるの?好きなんでしょ?もう誤魔化さないで正直に教えてよ」
一度も誤魔化してなんかいないのに、そんな風に言われて小さな不満が顔を出す。
「好きとかじゃないよ。本当に、ただのいい友人だよ」
「じゃあ、一切特別な感情とかないの?」




