Fクラス特別講師5
学食――
今日も、お昼の学食はとても賑わっている。
私のパスタを食べながら、ドングリを頬張るラブを見ていると、向かい側に座るメイがぽつりと呟いた。
「羨ましいな」
「ん?何が?まさかドングリが食べたいの?」
まだあるよ、とポケットに手を突っ込もうとすると「そんなわけないでしょ!」と怒り出すメイ。
「はは、冗談よ。冗談。で、何が羨ましいの?」
と首を傾げると、「超絶美形の特別講師、カミヅキ・ディオン様の授業を受けれる事に決まってるじゃない!それ以外何があるのよ!」と大きな声で言った。
「え!?まだそれを言うの?さっき、やっとその話が終わったと思ってたのに……」
「だって、だって……羨ましいものは羨ましいんだもん!」
メイは、机を何度も叩いて悔しさを露わにする。
「私からしたらメイが羨ましいわよ。あんな奴の顔を拝まなくていいんだし……」
「くぅ~!!ならシエルと変わりたい!!いや、この際変わらせて!!」
そう話ながら、メイは机越しに私の手を握ってくる。
「私も、変われるならメイと変わりたいよ……」
そんな事してもすぐバレて怒られるだけだけど。
お互いため息が出る。
「シエルはなんでそんな嫌うの?確かに愛想は無いしクールだけど、あの見た目だよ?クール&ビューティだよ!?見てるだけで完全に目の保養じゃん!」
「目の保養……クール&ビューティ……」
なんとも言えない言い方に、二の腕をさすった。
サイコパスな部分を知らなかったら私もそう思えたのかな?
でも、もう知っちゃってるから今となってはよく分からない。
「愛想とかいう問題じゃないわよ。あの講師は人として終わってるのよ」
首絞めたり、突き落としたり……あんなの、ただの殺人鬼だよ。
でも、ラブの時に助けてくれた。
奴が助けてくれなかったら、私は今頃ここに居ないのかもしれない。
それもこれも、きっと恩を売る為なんだろう。
本人は売ってない、って言ってたけど……そんなの絶対嘘に決まってる!
いつか、ここぞとばかりに、あの時の恩を返せと言われるのが落ちだろう。
今からでも、いつその時が来るのかと、恐怖しかない。
「そこまで毛嫌いするほど最悪な授業だったの?Sクラスの方からは『凄く分かりやすい』って評判が聞こえてくるんだけど」
「うっ……」
認めたくはないけど、奴の授業は凄く良かった。
他の講師と同じような授業内容なのに、何が駄目なのか、どうして上手くいかないのかを的確に指摘してくれた。
全員の得意不得意を言い当てた上で、今後何を勉強していけば良いかまで具体的に伝えていた。
どの講師よりも断然分かりやすくて、たった1回の授業でこれほど成長した気になったのは初めてだ。
だから、愛想は皆無だけど、奴が本当に凄い魔法使いで、『特別講師』と呼ばれるだけはあるんだと、なんか納得してしまった。
「授業が悪いとかじゃないんだけど……」
「じゃあ何?授業以外で何かあったの?」
そんな質問にドキっと心臓が跳ねる。
「そ、そんなわけないじゃん!」
「ふーん?」
「性格悪そうな所……そう!そこが嫌なの!」
見透かすような目が向くから、つい適当な事を口にして目を逸らしてしまう。
「性格悪いというより、人と関わらない感じなだけじゃない?」
「メイ、なんか凄く詳しいね」
「もちろんよ。あの美貌よ?チェックしてるに決まってるでしょ!」
当たり前のように、そんな事を言ってのけるメイ。
「シエルは下級クラス棟だから知らないかもしれないけど、カミヅキ様って昨日今日来たんじゃなくて、3年前に赴任したんだよ?」
「え!?そうなの?」
じゃあ、2年前に会った時はその時?




