Fクラス特別講師4
「……ディオン……」
一度名前を口にしてから気付いた。
奴の名前を口にする事は、なぜか不快感よりも恥ずかしさが勝るということに。
こんな事、こいつにバレたら一大事だ。
キモイキモイ言われて馬鹿にされ、一生ネタにされるかもしれない。
と考えていると、なぜか奴は不満そうな顔で見下してくる。
「聞こえねぇよ」
「な、なんでよ!今言ったでしょ!」
「小せぇんだよ」
「くぅ……っ!!」
何を恥ずかしがってんの私!
こんなの、ただの言葉よ!
「ディオン、ディオン、ディオン、ディオン!はい!!これで聞こえたでしょ!」
と大きな声で叫ぶと、「煩さい」と言われて再びデコピンをされる。
「痛っ!」
さっきと同じ所にデコピンをされたせいで傷みが倍に感じる。
いや、それ以上かも。
言えって言われたから呼んだのに、なんて酷い奴!やっぱり講師失格よ!
涙目で睨みつけると、奴は私の描いたスケッチを指でコンコンと叩いた。
「で、この生き物はなんだ」
「ライオン……だけど?だってお題がライオンだし」
「まさか、これで完成か?」
「これで……完成だけど?」
私の言葉に奴はキョトンとした顔になり、突然、大きな手で顔を覆った。
何事かと思っていると、くるりと背を向けて肩を大きく震わせ始める。
ククッという声が聞こえ、そこで初めて笑われていると気付いた。
なんだか分からないけど、ふつふつと恥ずかしさが湧き上がってくる。
「なっ、なによ!」
「はー、まさかとは思ったけど……お前ってクソ程にセンスねぇな」
どう見ても猫だろ、と追撃するように言われて、思わず立ち上がる。
「う、嘘よ!本当はまだ途中なのよ!今から仕上げるんだから!!」
「さっき、これで完成だって言ってたじゃねぇか。苦しいな」
「ま、間違えただけよ!集中できないから、どっか行ってよ!」
絵を隠してカンカンに怒ると、「集中しても一緒だろ」と言われ、キッと睨みつけた。
「私、こう見えても最近す~~っごく調子が良くて絶好調なんだから!」
「へぇ。じゃあ見ててやるよ」
「えっ……?見っ……」
片方の口角を上げて嘲笑うような視線が、私の絵に向けられる。
再びククッと笑う声が聞こえて、ますます恥ずかしくなる。
「ほら、やれよ。その絶好調とやらを見ててやるからさ」
「え……。いや……それは……ちょっと……」
この後、撃沈したのは言うまでもない。
↓☆☆☆☆☆をポチッと押して評価してもらえるとすっごく励みになります(>_<)よろしくお願いしますm(__)m




