Fクラス特別講師3
「うわっ!」
ビックリして一瞬椅子ごとひっくり返りそうになった私は、なんとか体勢を持ち直し、膝に乗っていたラブを慌てて空中キャッチした。
「何だ?その生き物は」
「えっ?……私が召喚した熊のラブだけど……って、そんなのあんたも知って……」
「熊野郎の話をしてんじゃねぇよ」
講師なのに、相変わらず言葉遣い悪いな。
魔力だけじゃなくて、話し方も採用試験に組み込んでほしい所だ!
でも……こんなのでも一応講師なんだよね。
ってことは一応敬語を使うべき?
嫌だな。けどタメ口なんてよくないよね。何度も言うけど、一応講師だし。
「じゃあ、なんの話……ですか?」
敬語を使ってみたものの、次の瞬間、猛烈に後悔する。
こいつに敬語を使うと、自分の腸が煮えくり返りそうだ。
ラブの時に助けてくれたけど、2度も殺そうとしてきた事には変わりない。
しかも意味不明な恩まで売りつけて……
『敬う言葉』と書いて敬語だ。
魔力以外に敬う要素がなく、口も性格も悪いサイコパス講師に、敬語なんて必要なんだろうか?
「なんだ、そのキモい話し方は」
ドン引きの目を向けられ、やっぱり敬語なんて必要の無い相手だと、心の中で認定ハンコを押した。
「煩い!私だってあんたなんかに敬語なんて使いたくないわよ!でも一応講師だから仕方なく……」
「あんたあんた煩せぇな」
私に鋭い目が向く。
「名前、もう忘れたのかよ。お前のここは空っぽかよ」
そう言っていきなりデコピンしてきた。
「痛っ……!」
痛む額を押さえて、講師だなんて呼ぶのもバカらしいこの男を睨みつける。
「何すんのよ!」
「お前が脳のない馬鹿だからだろ」
「馬っ……、名前くらい覚えてるわよ!」
「じゃあ、言えよ。覚えてるのかチェックしてやる」
「……えっ」
なんか嫌だ。こんな奴の名前を呼ぶなんて。
「よ、呼ばない!」
ってか呼びたくない!
「なんだよ。覚えてるなんて嘘だったんだな。やっぱ馬鹿確定か」
「覚えてるって言ってるじゃん!」
「じゃあ言えよ」
「うっ……」
くそー!
ただ、言いたくないだけなのに……
「ディ……」
「ん」
無駄に綺麗な目が、じっと私を見ている事に気付いて、なぜか目を逸らしてしまう。




