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【大賞受賞作】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?~あなたがくれた幸せの呪い~  作者: 花澄そう


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魔力の覚醒1


「ここが私の部屋だよ」


熊ちゃんを部屋に連れ帰ると、警戒心たっぷりに部屋を見回しながら「くーん……」と小さく鳴いた。



「これからここで一緒に住むんだよ。あっ。熊ちゃんのベッドとか必要かな?カゴとか箱とか、何か使えそうな物がないかな……」

部屋中を見渡してみたけど、使えそうな物は見当たらない。


「熊ちゃん、後でメイのとこ行ってみようか。あ、それと……いつまでも『熊ちゃん』だと微妙だよね」


つぶらな瞳でこちらを見つめる熊ちゃんに、思わず微笑む。



「熊だからベアー?茶色だからショコラ?どれも悪くないけど……やっぱり、この熊ちゃんにしか似合わない名前がいいよね」

あごに人差し指を当てて考えていると、ふと熊ちゃんが背中を向けた。


その時目に入ったのは、背中にあるハートのような白い模様。


それを見てひらめいた私は、熊ちゃんの脇をそっと抱え上げた。


「決めた。君の名前は――ラブよ」


ラブと名付けられた熊ちゃんが、じっとこちらを見つめると、どこか嬉しそうに「くーん」と鳴いた。






色とりどりの花が咲き誇る、学園の園庭――


種から魔法で芽を出させる小テストの順番待ちをしている私は、ラブを芝生に降ろす。


すると、

「ねぇねぇ、ラブちゃんにエサはもうあげたの?」

と話しかけてきたのは、何歳も年下のクラスメイト。


「まだだよ」

「やった!実はね、ドングリが好きって聞いてグランドに落ちてるの沢山拾って来たんだ。あげてもいい?」

「いいよ。ありがとう」


クラスメイトはズボンのポケットから山のようなどんぐりを取り出し、ラブに差し出した。


すぐに大好物のドングリをリスみたいに頬張るラブ。

その様子に気付いた周りのクラスメイトたちが、次々に集まってくる。



あの後に知ったけど、生き物を召喚することは、とても珍しくて凄い事だったらしい。講師でもほとんど出来ないんだとか。


しかも、Fクラスの人間が生き物を召喚をしてしまうなんて学園史上前代未聞(ぜんだいみもん)の事例で、あのディオンとか言う奴が助言してくれなかったら、誰も私が召喚したって信じなかっただろうなって空気だった。


学園長も教頭先生も、ディオンには逆らえない雰囲気で、奴が言う事は全て正しいという感じだった。


特別講師は魔法に非常にけていて、魔法使いの中でもほんの一人握りの人しかなれない職って聞いたけど……

あの時の様子を思い出すと、本当に凄い魔法使いなんだろうな。


……なんだか複雑な気分。



「かわい~い」

「いいなぁ~私もラブちゃんみたいなペットが欲しい~」

「私も~」


沢山のクラスメイトに囲まれ始めて、ついにFクラス講師の声が割って入って来た。



「はい!そこ!召喚獣が珍しいのは分かりますが、静かに待っててください!小テスト中なのに気が散ります!」

講師が目を吊り上げ言うと、ザワついていた辺りが一瞬で静まり返った。


「そしてタチバナさん、次あなたの番ですよ!ちゃんと並んでてください!」

そう言われて見ると、次が自分の番だった。


「あ!すみません!」

講師の言葉に焦って立ち上がると、足元から声がする。


「ラブちゃんは僕が見てるから行って来て。僕もう小テスト終わったし」

「ありがとう」




…………


……


「タチバナさん。召喚獣をたまたま奇跡的に召喚が出来たからって良い気にならない事ね」

ステッキを持った講師は、腕を組んで大きな胸を揺らした。


「えっ……良い気になんて……」

「言い訳しない!」

「はい。すみません……」

「はぁー。話を聞いてなさそうなあなたの為に、おさらいしてあげるわ」

講師はため息をつくと、地面にある土の入った植木鉢うえきばちをステッキで指した。


「この鉢の中にお花の種が入っているわ。それを発芽させれば小テスト合格よ。芽はどんなに小さくてもいいわ。って、あなたは4度目くらいだったわね」

講師は馬鹿にしたように、ステッキを1回転させるとクスリと笑った。

そんな様子に小さな苛立ちを覚える。



この小テスト。

7歳から10歳くらいの子供ならだいたい合格できる内容だ。

それなのに、私は一度も合格したことがない。



でも……今回は出来るかもしれない、と思っている。



だって、たまたまだったんだろうけど、奇跡的にラブを召喚できたし、今まで起こせなかった風も起こすことができたから。


もしかしたら、今まで成長が遅れていただけで、ようやく私の魔力も増えてきたのかもしれない。


「はい。始めて」

「はい」

私は、大きく深呼吸をしてはちに手をかざす。


芽の成長を願うように魔力を注ぎ込む。


すると――土の中から可愛い緑の芽がピョコンと飛び出した。


「え!?」

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