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【大賞受賞作】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?~あなたがくれた幸せの呪い~  作者: 花澄そう


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召喚4


「なんで助けたの?またおんを売る気?」

警戒心たっぷりな目をして言われた言葉に、イラついた。


「は?なんだその言い方は。殺すぞ」

「だって……あなたは、ただ単に人を助けるような人間じゃないでしょ」


生意気なクソガキだ。

こんな奴、助けるんじゃなかった。

今すぐにでも、この熊を元のサイズに戻してやろうか。


そして自分の非を認めるまで、この場でなぶり殺される様子を鑑賞するのも一興だな。

いや、死なない程度に時々回復して永遠の傷みを味合わせるのもいいかもしれない。


なんてな……

別にわざわざそんな面倒くせぇこと、しねーけど。



「何も売ってねぇよ」

「そんなの信じられるわけないでしょ!じゃあなんで助けたのよ!」


そんなのは俺が聞きたい。


この前の事だってそうだ。


ああ……、そうか。

この前のは分からないが、今回はきっとあれだな。


「謎を残したまま勝手に死ぬんじゃねぇよ」

「へ……?」

「俺はまだお前の秘密を暴いてねぇ。死ぬなら暴いた後に死ね!このクソ貧乳が!」


ひんっ……!?ひ、酷い!!」

慌てて貧相な胸元を隠して真っ赤になった女生徒は、年下の同級生に聞かれる。

「シエルお姉ちゃん、ひんぬーってなぁに?」


その質問にさらに赤くなった女生徒は、ほほに手を当てた。

「え、えっと……それは……」


困り果てている様子が面白くて、口角が吊り上がりそうになった。



その時――

「きゃっ!何っ?」

驚いた顔をしたシエルという女の顔に、パッと笑顔が咲いた。


「何なに~。ふふっ、くすぐったいよ」

あいつの視線の先には、胸の膨らみに顔をうずめる、小さくなった熊の姿。

その様子に、意味不明に殺意が湧いた。


すぐに熊の首元を掴み、女から取り上げると「何するの!返して!」と手を伸ばして来る。


「コレ、授業で出された生き物じゃねぇだろ。どっから侵入して来たのか知らねぇけど、こいつは野生に返す」

で、がけのてっぺんにでも転送してやる。


「違うよ、()()()()()の!」

「は?何言ってんだ。んな訳ねぇだろうが。寝言は寝てから言え」

口をゆがめると、足元にいる別のガキが説明し出す。


「本当だよ。シエルお姉ちゃんは、熊の絵を見て魔法で絵を書く練習をしていたのに、本物の熊を出しちゃったんだよ!僕、ちゃんとシエルお姉ちゃんの絵から飛び出すところ見たよ!だから熊ちゃんを放してあげて!」


その話を聞いて、信じられない気持ちで辺りを見る。

すると、皆、思い思いに熊の絵を書いていたキャンパスがそこら中に転がっていた。



生き物を召喚出来るのは、瞬間移動よりもはるかに難しい。


優秀な魔法使いでも、そう簡単に出来る技じゃない。

しかも召喚の仕方も教えられていない人間が出すなんて……そんな事……


どうせ見間違いか何かだろ。



「ウ~、グルル……」

低いうなり声が聞こえて掴んだままの熊野郎に目をやる。


威嚇いかくはしているが、不安げな瞳で俺を見ている。

まるで殺さないでと懇願しているかのようだ。


今さっき、ガキどもを襲おうとしてたくせに、なんて無様ぶざまなんだ。


でも……確かに、こいつからはあいつと同じ魔力の気配がするな。

って事は……まさか、ガキの話は本当か?



間違って召喚してしまうなんて、そんな事が本当に起こるのか……

あごに手を当て、再びシエルという女に目をやり、魔力を探る。



すると、ゴミのような魔力の中に、爆発的な潜在能力のようなものが見え隠れしていた。

俺が屋根から突き落とした日に一瞬見えたものは、これか?


……ん?

なんだ?これは……


かすかにだが、胸あたりから、こいつ以外の魔力を感じるな。

まるで複数の魔力が融合して混ざり合っているようにも見える。


まさか、これって……


いや、ありえない。

アレと似てはいるが、流石さすがに違うはずだ。

学園内にそんなものが存在するはずがない。

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