召喚1
「カミヅキ様。今日の特別授業を拝見させて頂きました。
やはりカミヅキ様は他の講師とは格が違いますね。感服致しました」
白髭混じりの教頭が、ゴマをするように手を合わせながら横を歩いている。
俺は、その姿を見下ろし、心の中でため息をついた。
『今日だけは勘弁してくれ』と。
昨夜、昔の夢を見たせいでろくに眠れなかった。
頭が全然回らないこの状態で、教頭のクソ長い話を聞かされるのは正直キツい。
いっその事、このまま消えてやろうか……
「カミヅキ様、週1回の特別講師として再契約して頂きましたが……」
鬱陶しいな、なんだよ。
そう思いながら横目で教頭を睨む。
「常勤されるお考えなどは……」
「ない」
話が長引きそうな予感に遮るよう即答すると、教頭が焦りを見せた。
「そ、そうですよね。カミヅキ様ほどの方が、そんな事を考えたり致しませんよね。大変失礼いたしました」
なら聞いてくんな!と心の中で吐き捨て、早足で講師室へと向かう。
「実は、こんな事を聞いたのは理由がございまして」
その言葉に、再び教頭の方に目をやる。
「国からのお達しがあったのです」
「お達し?」
「はい。そうなんです。先日、下のクラスを早く育てよ、と通達が来まして……」
「なんだその話。どうして国がそんな通達してくるんだ。訳が分からん」
「多分ですが……時期が近いのかもしれません……」
目を伏せて言う教頭の言葉の意味が分からず、眉をひそめる。
「なんの時期だ?」
そう聞くと、教頭はハッとした顔をして、両手の手の平をこちらに向けた。
「あ、あくまでも私の予想や推測ですので、勘違いかと……」
「はぁ?」
「と、とにかく、カミヅキ様の授業は本当に充実したものです!なので複数クラスを受け持つ契約に変更したいと、学園長も申し上げておりました。ですが……やはり難しいでしょうか?」
断りてぇ。けど、国の意向に背くのは面倒だな。
まだ暫くはNIHONにいてぇし……
ってか、どうして下のクラスを押し上げたいんだ?
近年は卒業までにかかる年数が伸び傾向にあると聞いたが、それが原因か?
ここの設備費や食費など、莫大な額がかけられているというのは有名な話だ。
学園内で魔力を使った内職を生徒にさせる事もあるらしいが、そんなのはここの維持費を考えると雀の涙だろう。
ってことは、節税の為に卒業させるのが国の目的か?
なら、育てないといけないのは下じゃなくて上じゃねぇのか?かなり長い目で見てるのか?
本当に節税の為に早く卒業させたいのなら、単純にルールを変えて早く卒業させればいいだけだ。
そもそも俺が思うに、こんなIクラスからSクラスまでなんて絶対必要ない。
本来の目的を考えたら、せいぜい5クラスあれば十分だろう。
なのに……こんな10クラスも無駄に作って。テストだって年に1回しかない。
前から思っていたが、このシステムは――あえて卒業を先延ばしにしているかのようだ。
やっぱ、国の考える事は相変わらずサッパリだな。
でも長年の経験で分かってる。
国の命には逆らわないっ方がいいって。
とりあえず、出来るだけその返事は先延ばしにしておくか。
「考えさせてくれ」
山のようにある職の中で1番労働時間が短いこの職を選んだのに、とんだ誤算だったようだ。
そんな事を考えているとも知らない教頭は、俺の返事を聞いた途端、深々と頭を下げてつむじを見せた。
「よろしくお願い致します!大魔法使い様!」
その瞬間、心底イラっとした。
「おい」
「はい?」
俺は、頭を上げたばかりの教頭の口に指を向けてピシャリと言う。
「てめぇ……今なんて言った?」
「えっ、ありがとうございます、大……魔法……」
その瞬間、教頭はハッとした顔をして口に手を当てた。
みるみる青くなっていく教頭は震えそうな声で謝ってくる。
「も……ももも申し訳ございません」
「他の奴らがいる場所で俺の肩書を口にするなと言ったよな?」
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