どうして私たちの子供ばかり2
「シエル。外はとっても危険なんだ。
だから、6歳になったらお外デビューしようね。それまで我慢出来るかい?」
危険……?
監禁みたいな事をしているのは、実は究極の過保護って事?
6歳という基準は何?
……あっ!小学校に行く年だっけ?
小学校は義務教育だもんね。さすがに小学校は行かせる気なんだ。
ずっと言われている『長生きして』という言葉の裏に、何か隠されている気がする。
実は私より前に生まれた子供が居て、小さい頃に交通事故に遭ったとか……
本当は聞きたいことが山のようにあった。
でも、そんな疑問は口から出ないようにゴクリとお腹に戻して俯いた。
だって、これ以上はなんとなく聞いてはいけない気がしたから。
結局、顔色をうかがってしまう。
そんな私は前世を引きずったままの私なんだろう。当然と言えば当然なんだけど……
でも、あと2年すれば出れると知れただけでも聞けてよかった。
そう思って、胸に疑問や不満を無理やり押し込んだ。
――その時、不意に部屋の空気が変わった気がした。
妙にひんやりとして、背中に冷ややかで寒い感覚を感じる。
「……?」
椅子に腰掛けたまま、不思議に思った私が少し振り返ろうとした、その瞬間――
突然、漆黒の長い髪が私の首に絡みついた。
一瞬で息が詰まるほどの苦しさに目を見開き、思わず手を振り上げる。
でも、その髪は鋼鉄のように固く、ビクともしない。
「は……あぁ……」
お父さん……お母さん……助けて……
そう言いたいのに上手く声が出せない。
耳元でくぐもったような低い声が響く。
『まだ生きていたのか。殺してやる』
「や……め……」
次の瞬間、折れそうなくらいに絞め上げられ――
「ああぁ――――!!」
景色がガラリと変わり、いつもの天井が視界に入った。
気持ち悪い感覚が顔に広がり、手を当てるとべっとりとした汗がついていた。
そして、荒い自分の息遣いが耳に入ってきて、さっき見た映像は現実ではなく、ただの悪夢だと理解した。
もう夢だと分かっているのに、私は首に手を当てて無事を確かめずにはいられなかった。
心臓はドドドドと酷い音を立てて、うるさいくらいに脈打っている。
ふと首を右に振ると、薄暗く、ほんのり青い寝室の様子がいつもと違っていた。
いうならば、大きな地震でも来たかのようで酷く荒れていた。
何事かと思った時、反対側からすすり泣く声が飛び込んで来た。
「うっ……ぐずっ……」
その声に引き寄せられるように、今度は左側に首を振る。
「……嘘でしょ……。今度は大丈夫だって、思ってたのに……」
「どうして……どうして私たちの子供ばかり……」
反対側では、私が目覚めた事にも気付かない両親がパジャマ姿で抱き合い、肩震わせて泣き続けていた。
その姿は、まるで人生の終わりを嘆き悲しむかのようで、私はただ呆然と見ていた。
起き上がろうとすると、全身に鉛を仕込まれたような重さと、容赦ない疲労感に襲われた。
いつの間にか瞼が閉じていて、重りのように感じる瞼を無理やり開けた。
すると、薄暗かった寝室は昼間のような明るい部屋に変わっていた。
両親が泣いていた場所に首を振ると、そこにはもう誰も居なかった。
そのことに一度目をパチクリさせてから反対を向くと、今度は荒れていたはずの部屋がほとんど元通りになっていて、頭にはてなマークが浮かんだ。
一瞬見たあの光景は夢だったのか?
って事は、あの悪夢は夢の中の夢?
そんな事を考えていると、「あら起きたの?おはよう」とお母さんがエプロンで手を拭きながら駆け寄って来た。
「おはよう」
「体、痛い所とか辛いとかない?」
いきなり体を労わるような質問が飛んで来て、凄い違和感を覚える。
「私は大丈夫」
「そう……、よかった」
顔を見上げると、お母さんの目は泣き腫らしたように赤く腫れていて、心なしか目元に深い疲れが滲んでいるように見えた。
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