月夜4
すると、突然腕の力が抜けてベッドに背を預けてしまった。
「ひゃっ……」
仰向けになってしまった私の首元に、ゆっくりと手が伸びてくる。
また首を絞められると思い身構えたけど、その手はなぜか肩に触れた。
奴は、私の濡れた黒い髪をすくい上げ、不満そうな顔を見せる。
「お前……ほんと変なやつだよな。
この俺に歯向かったり……本当は死にたくねぇくせに強がったり……こんな呆れそうな魔力を隠して」
だから……この俺って、どの俺よ!?
そして呆れそうな魔力って?
私、そんな壊滅的にヤバいって事?酷過ぎる!
「おかしな奴だ……」
おかしな奴検定が存在していたら、絶対に私より高得点を取るであろう目の前の奴は、突然笑みを零した。
うっ…………わぁ……
その表情を目にした瞬間、ドクンと心臓が跳ねた。
奴がこぼした笑みは、飛びぬけて美しく、私は思わず息の仕方を忘れてしまった。
自分の心臓は、今まで味わった事がないほどに鷲掴みされたようにギュッと苦しくなった。
「こんなにも長く生きて来て、お前みたいな奴は初めてだ」
そう呟くと、何故か私の髪にキスを落とした。
その瞬間、心臓が壊れるんじゃないかと思うくらいにドキドキした。
2度も私を殺そうとして来た相手なのに、本当にどうかしてると思った。
用済みのように雑にポイっと放された私の髪は、胸の上にパサリと落ちた。
次の瞬間、奴の目が怪しげに蒼く輝き、私の顔を挟むようにして両手をベッドに置いた。
ギシっと軋む音が耳元に響く。
「俺はこの世の事ならなんでも知っている。なのに……」
奴は少し首を傾げ、首筋の色気を漂わせながら顔を私の顔に近づけてくる。
「え……ちょ……っと」
まさかキスされるのでは!と一瞬脳裏に走った予感は、奴の顔が私の横を通り過ぎたことで消えた。
「ひっ……」
そして奴が私の首元に顔を埋めたと分かった瞬間、再び体が硬直した。
「ひゃ……な、何してんのよ!何もしないって……」
「気持ち悪りぃ……」
その言葉に、目をパチッと開ける。
え?私が!?
それとも体調が悪い!?
ヒィー!吐くなら他でお願いします!
「お前が吐けば何もしないつもりだった。この俺に分からねぇ事があるなんて気持ち悪りぃんだよ。そんなの、あの得体のしれない奴だけで十分だ……」
一体、何の話を……
そう思った時、腹部にくすぐったい感覚が走り、体が一瞬震える。
「……んっ……」
「だから今すぐ吐け」
耳元で囁かれただけで、自分の口から変な声が出そうになる。
「や、やめてよ!」
ベッドに肘をつき、なんとか体を起こそうとすると、自分のシャツの裾から奴の手が差し入っている様子が目に飛び込んで来た。
その瞬間、体が沸騰したかのように体温が上昇した。
「やっ……な、何して……」
そう話している間に、さらにシャツがめくり上がり、自分のお腹があらわになってドキっとする。
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