放課後の実験室3
ウザそうに首を傾げたこの男は、続ける。
「この俺を侮蔑したんだから仕方ねぇよなぁ?
でも優しい俺は選ばせてやるよ。いたぶった後、物理で死にてぇか……魔法で焼き殺されてぇか」
そう言うと、首の絞まりをほんの少し緩める。
わずかな酸素が喉を通り、ゆっくりと肺に届いていく。
「さぁ、答えろよ」
どっちかなんて、選べれるわけが無い。
目をギュッと閉じた私の前髪を男が鷲掴む。
「痛っ……!」
「答えろっつってんだろ?」
頭を振られ、目を開けると、歪みきった美しい笑みが視界いっぱいに映る。
何、こいつ……、笑ってる……?
……完全に、狂ってる……
まさか、殺人を楽しんでるの?
そうだとしたら……こいつは、憎きあの黒髪の奴と完全に同類だ!!
その時――
「なーんてな」
突然、男の手が首から離れた。
次の瞬間、私は重力のままに冷たい床に崩れ落ちた。
むせるように咳が込み上げ、酸素を必死に吸い込む。
「はぁー……はぁー……」
頭は酷く重く、貧血なんてレベルじゃない。
後頭部を壁に預ける私の耳に、男の低い笑い声が入り込む。
近くで服の擦れる音がして目を向けると、男は私を覗き込むようにしゃがみ込んでいた。
「威勢が良いのは、もう終わりかよ。クソつまんねぇな」
ペチペチと私の頬を軽く叩き、立ち上がる。
「ま、これで懲りたろ?今後は俺にはあんな態度を取らねぇことだな」
そう吐き捨てた悪魔のような男は、この場から姿を消した。
…………
……
あの出来事以来、また奴に出くわすのが怖くて、居残り勉強を止めてしまった。
そのせいで(と思いたい)進級試験に2連続て落ちて、私はFクラスのまま16歳になってしまった。
でも不幸中の幸い。
あの最低最悪な奴とは、あの日を最後にこの2年間、一度も顔を合わせていない。
教室に入る時も去る時も、瞬間移動しているように見えた。
きっと奴はSクラスの生徒で、その後の試験で無事に卒業したんだろう、と私は勝手に結論づけた。
だから、もう二度と奴に会うことはない――
そう思い込んで警戒を解いた私の判断が、後に短絡的だったと気付くことになる。
放課後の実験室はここまでになります。
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