放課後の実験室2
私を押さえ込む影は、低く囁いた。
「馬鹿。静かにしろ」
妙に色気を含んだその声が、私の耳朶を揺らし、恐怖と混乱で心臓が激しく早鐘を打つ。
「っ……!?」
逃げようと必死に暴れる。
でも、目の前には黒い何かが立ちはだかり、背中側は冷たい壁。完全に逃げ場がない。
「おい、それ以上騒いだら口縫いつけんぞ」
そんな乱暴な言葉が耳に、思わず恐る恐る目を向けた。
すると――
息を飲むほどに整った顔立ちが、私の視界にいっぱいに映り込んだ。
「……っ!」
癖のない白銀の髪がさらりと揺れる。
吸い込まれそうな程に綺麗な色をした碧眼が、私を冷ややかに見下ろしていた。
碧眼男は、私の口元から手を離す。
あれ……
……この人、どこかで……
「あっ!」
思い出した!
入園翌日に迷子になった時に会った……
「……ムカつく奴!」
その言葉を口にした瞬間、自分の失言に気付く。でも、もう後の祭り。
目の前の男は、一気に怪訝な顔になっていく。
焦って何か言い訳を考えようとするけれど、頭は真っ白で、あたふたするばかり。
「これは違っ……」
ん?でも違わないよね?
初対面で酷い態度を取られたのは本当なんだし……
「あ゛?」
男の低く響く声に、心臓が縮み上がる。
『ヒィー!怖い!目つきヤバイ!』
内心でそう叫ぶと、男は何かに気付いたように静かに片眉を上げた。
「ん?お前、前にどっかで会った事あるか?」
「……え?」
あれ?覚えてないんだ。
まぁ一瞬だったし、あれから10年近く経ってるもんね。
というかこの人……制服は着ていないけど、上級クラス生かな?
20代後半くらいに見えるし、職員にしては、あれから1度も見かけた記憶がないし……
「クク、なんだそのゴミ糞レベルな魔力は……」
突然のほくそ笑みにカチンときた。
はぁ!?
またまたほぼ初対面で、なんて失礼な!
5歳の時も、私に向かって『ガキ』だとか『馬鹿』だとか言ってきてたよね!?
「ゴミ糞なのはあなたでしょ!礼儀も知らない大人が恥ずかしくないの!?」
感情のまま叫ぶと、男の目が再び冷ややかな目つきに変わった。その瞬間、私の背筋が凍り付く。
男はスッと手を持ち上げ、勢いよく私の首を掴んだ。
「うっ……!」
その衝撃で、後ろの壁に叩きつけられる。
「この俺にそんな口を利いて……死にてぇのか?」
美しすぎる顔をしたこの男は、憎悪むき出しで私の首に力を加える。
ヤバイ……
これ、本気だ……
息が……出来ない!!
「はっ……あ……」
掴まれた手を両手で引き剥がそうとするけど、全く動かない。
「細いな。今すぐにでも、へし折ってやろうか」
血なんて通ってないような冷たい目で、そんな恐ろしい事を言うから、全身が鳥肌立った。
「うっ……」
首元にある奴の手に爪を立てると、なぜか突然指先の感覚が消えて力が抜けた。
「抵抗すんなよ。手加減できなくなるだろ?」
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