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【大賞受賞作】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?~あなたがくれた幸せの呪い~  作者: 花澄そう


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時を超えた狂愛の檻3


足が勝手に動き、何かの悪い冗談であってほしいと願いながら、俺はシエルの元へ駆け寄った。


シエルの手を取ると、酷く冷たかった。

今まで一度も感じたことのない、絶望的な冷たさが俺の手に伝わり、胸の奥から恐怖が一気に湧き上がる。


「……う、嘘だろ……」


自分の手足が震える。

まるで悪夢の中にいるかのように、信じられない気持ちで俺は回復魔法をかけ始めた。


「シエル……。今助けてやる……」

声が震え、周りの声なんて耳に入らない。

ただ、彼女を失いたくない一心で、無我夢中で魔法をかけ続ける。


遠くで講師の声が響く。

「タチバナさんはもう……」

そんな声など、どうでもいい。



俺の世界には、シエルしかいない。

シエルがいない世界なんて、そんなのありえねぇし、考えたくもない。



「お願いだ……戻ってこい……っ!!」


魔力をいくら絞り出しても、シエルは微動びどうだにしない。



冷たい手は何も応えてくれない。

それでも、俺は止められなかった。


シエルを失うことが恐ろしくて、どんなに無力だとしても、祈るように、何度も何度も回復魔法をかけ続けた――




学園の生徒が戦争に駆り出されると聞いたことはある。

だが、そんな兆候ちょうこうは無かったはずだ。



いや……俺が気づいていなかっただけなのかもしれない。

誰とも慣れ合わず、誰とも話さずに過ごしてきたツケが、今になって回ってきたのか?


でも、そうだったとしても、講師業の休みはたった2か月間だ。

しかも、俺が完全に不在だったのは、たった半月に過ぎない。


休みの間に戦争に行く事が決まったのか?

そして手紙を渡した直後に戦地へ向かった……?



頭の中に、シエルの言葉がふいによみがえる。


『ディオン……もし、私が……。ううん……なんでもない……』

あの時、眉を寄せ、何か言いたげにうつむいていたシエル。

もしかして、あの時すでに……死を覚悟していたのか?



「シエル……、シエル……どうして……」


なんんで俺に言わなかったんだ!!


――お前だけでも、絶対に助け出したのに!!

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